冬セールは例年通り 揺れる百貨店の事情
地方百貨店には死活問題
アパレルの見込みどおり、今夏はセールの後ろ倒しで正規価格品比率が拡大した。例年に比べセール期間の売り上げが減るなど一部弊害もあったが、オンワードの2~8月期の国内事業営業利益は前年同期比47%増の49億円と期初計画を2割上回るほど急改善。セールの後ろ倒しに「手応えを感じた」(馬場昭典社長)としており、来年の夏も今年と同じ時期に始める方針だ。
が、百貨店の評価は異なる。ある大手百貨店幹部は「正規価格品とセール品の両方の売り上げが取れると思ったが、見込みとは程遠い」と悔やむ。セール開始を後ろ倒しに変更した東急百貨店も「(各百貨店で)セールが分散したせいで盛り上がりに欠けた」と話す。実際、7月の全国百貨店売上高は前年同月比3・3%減少。8月も同1%減となった。
夏の“失敗”への反省から、今冬は例年どおりセールを行う百貨店だが、後ろ倒しに慎重なのは冬特有の事情もある。地方の百貨店は例年、初売りの福袋とセールで帰省客を集め、高い売り上げを上げる。夏のお盆休みと合わせ重要な稼ぎ時で、時期をずらすことは死活問題となる。
こうした中、アパレル側も声高には時期見直しを求められないのが現状だ。そこでオンワードは、セールは例年どおり2日に始める一方、セール後にも正規価格で販売する商品を昨年の1・3倍に増やし、正規価格品の販売比率向上を図る。セール開始日は未定とする三陽商会も、好調ブランドで単価の高いコートなど防寒衣料を前年比3倍投入するほか、一部のブランドでは「18日に本格的なセールを始める」と、採算悪化防止策を練っている。
すでに百貨店、アパレル側とも関心は来夏のセール開始時期に移りつつある。今冬、唯一セールを後ろ倒しにする三越伊勢丹の成果がその試金石となるのは間違いない。
(本誌:鈴木良英 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年10月20日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら