冬セールは例年通り 揺れる百貨店の事情
夏に広がった百貨店セールの後ろ倒し機運がここへ来て消沈している。三越伊勢丹ホールディングスは冬セールの開始を1月18日と2週間強遅らせる方針だが、J.フロント リテイリング、そごう・西武、高島屋などほかの大手は例年どおりの2日スタートになるという。
1991年には9・7兆円の年商規模を誇った百貨店もこの15年間は売り上げが右肩下がり。消費喚起の一環としてセールの時期を早めてきており、もともと7月下旬だった夏のセールは、90年代後半には中・上旬へと変更され、現在は7月1日が慣例化。近年は6月末に実施されるケースも出ている。冬も同様に1月下旬だったのが、2日の「初売り」と同時に始めるようになっている。
百貨店にとっては集客効果が見込めるセールだが、早期化は百貨店に商品を供給するアパレルメーカーの収益を圧迫してきた。アパレルは通常、3~5月、9~11月に正規価格で商品を販売して利益を稼ぐ一方、セール時期を含む6~8月および12月~2月の収益性は低い。セールの長期化によって、同時期が赤字となる企業も増えている。
また、近年は春の気温上昇が遅れたり残暑が長引く年も多く、現状のセールは「最需要期にセールをやっている状況」(三陽商会)だ。オンワード樫山や三陽商会など百貨店を軸とするアパレルは、値引き期間を短縮すべく、セール開始時期の見直しを百貨店に働きかけてきた。
アパレルの声に押されて今夏、三越伊勢丹は例年7月1日にスタートするクリアランス(在庫一掃)セールを、13日前後へ後ろ倒しした。高島屋も、セール開始日を1日と13日の2度に分けた。百貨店側にも単価の高い正規価格品の販売が拡大するメリットが見込まれたためだ。