味の素が「意外な特損」後に狙う大きな果実 ターゲットはアジアの家庭内食市場

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味の素はパキスタンやミャンマーなど海外進出を加速する(写真はパキスタンの市場の様子)

堅調な業績で知られる味の素に、今、何が起きているのか――。日本の食品最大手、味の素が業績の下方修正を発表した。2016年3月期の連結純利益を、従来予想の675億円から615億円へ9%下方修正したのだ。

修正の主因は、収益性に問題があった事業の再編だ。味の素の主力は調味料・加工食品の生産販売だが、うま味成分のアミノ酸に関する知見と技術を生かし、医薬やバイオ事業も手掛けている。

ところが、医薬事業は、薬価引き下げによる売上高の減少や、安価なジェネリック医薬品(後発医薬品)の台頭による競争激化が直撃。2015年3月期の医薬セグメント営業利益は、前期比半分近くに落ち込み、採算が悪化していた。

低採算の医薬事業でメリハリ

そこで、製薬事業を消化器関連に集約させることを決断。透析や輸液から撤退する一方、製薬子会社にエーザイから出資を仰ぎ、エーザイの消化器疾患領域事業の一部と統合した。これらに伴う医薬事業の構造改革費用で約185億円の特別損失を計上することとなった。内訳は、透析や輸液など撤退する事業に関する株式譲渡損で約50億円、契約解消金で約70億円、固定資産や知的財産権にかかわる減損損失で約50億円。統合にかかわる営業費用も約15億円かかる。

味の素がグループ内事業の再編を急ぐのは、高い収益性を誇る世界の巨人たちの背中を追いかけているからだ。飲料を除く食品メーカーの世界トップ10入りを標榜するが、営業利益ベースでの味の素の順位は2015年3月期時点で30位程度。売上高営業利益率でみても上位企業との差は歴然だ。ネスレ(スイス)の15%、クラフト・ハインツ(米国)の18%に比べ、味の素は7%と、半分にも満たない。世界のトップ10を現実のものとするためには、2020年計画の営業利益1500億円、営業利益率10%は必達目標である。

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