LGBT1000万人、同性カップル制で変わること 性的マイノリティの"不利益"は解消されるか
こうした公的な取り組みを受けて、民間企業も対応を始めた。従来、ほとんどの日本企業では、同性パートナーの社宅への入居や転勤の際の補助などが認められなかった。そのため人事異動を告げられると、本当の理由を言わずに、転職してしまうケースも多かったと考えられる。そこでパナソニックや第一生命保険など一部の日本企業は、4月から同性パートナーに対して福利厚生制度の部分的な適用を開始した。
だが制度運用に当たり早速課題も見え始めている。たとえば年金や健康保険などは国の制度とリンクしており、企業が独自にできることには限界がある。LGBT向けに福利厚生を充実させようにも、慶弔休暇や介護休暇などの適用にとどまらざるをえない。
また、そもそも何をもって同性パートナーと認定するか、という問題も横たわる。渋谷区や世田谷区などの公的証明書を要件とすると、パートナーシップ制度を導入していないほかの自治体に住む従業員との間に待遇の差が出てきてしまう。
LGBT議連が立法チームを立ち上げ
先進的な企業などでは、同じ住所に住んでいることを証明できれば、パートナーとして認める例も出てきてはいる。だが、ほかの自治体でも、何らかの公的な証明書の発行を望む声は多い。実際に、米国では各州の間で対応に差のあることが企業にとってコストになるとして、国レベルで制度を定めるように企業からの要求があった。
ここに来て日本でも国レベルのアクションが起きつつある。今年1月、国会で差別解消を目指したLGBT議連は、立法チームを立ち上げた。自民党でも特命委員会が法制化に向けて議論を始めている。
ただ、制度を整えてもLGBTであることをカミングアウトする当事者が出てこない、という壁に突き当たる企業も多い。長年LGBTへの理解がなかった会社で、カミングアウトするメリットはないと考えても不思議ではない。