(このひとに5つの質問)出井伸之 クオンタムリープ代表取締役

(このひとに5つの質問)出井伸之 クオンタムリープ代表取締役

ソニー株への投資を発表した「ドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)」。そのDICが組成したファンドのアドバイザリー・ボード・メンバーに就任した出井伸之氏に聞いた。(『週刊東洋経済』12月22日号より)

会社を動かすガソリンはその原産地を選ばない

1 DICの組成したファンドのアドバイザリー・ボード・メンバー就任と同ファンドのソニー株取得に、何かつながりがあるのでしょうか。

 まったく関係ない。DICから就任の要請があったのは今年3月ぐらい。僕は前から中近東に興味があって、引き受けると返事をしたのが6月か7月ごろ。その後、発表は8月になるか9月なのかといっているうちに時間が経ち、結果的に11月になった。投資の発表と時期が重なったのはたまたまだし、DICとの間でソニーへの投資に関する話はいっさいしていない。

2 出井さんはソニーのアドバイザリー・ボード議長も務めていますが、今回の就任は利益相反にならないでしょうか。

 アドバイザリー・ボードは、会社の業務を執行する人たちが必要とするときにアドバイスをする機関であって、何の拘束力も持たない。会社の議決をするわけじゃないんだから、利益相反なんて起こらないですよ。

3 最近の金融市場では政府系ファンドが存在感を増しています。この状況は企業にとってプラスに働くでしょうか。

 プラスでしょう。たとえばシティグループにアブダビ投資庁が出資する件でも、シティが倒産するより明らかにポジティブなアクション。企業家にとって苦しいときに助けてくれるかどうかが大事。そういう意味で世界はいい方向に動いている。もっと重要なのは世界が米英の金融支配から独立し始めたという点。今では(世界的な投資資金の動向で)中近東やアジアの割合が高くなっている。そうした多様性が生まれてきていることのほうが大切ですよ。

4 政府系ファンドの資金は今後さらに日本企業へ入ってくると見ていますか。

 ドバイの人がソニーの株を買ったというのは、「日本が大好きです」という非常に象徴的なメッセージを日本に送っている。ソニーみたいな大きな会社へ投資するということは、小さい会社にはもっと自由に投資できるということ。しかも、僕をアドバイザリー・ボード・メンバーに選んだ。皆さんが「出井が何かしたんじゃないか」と思うと、そのメッセージは4倍ぐらいの効果になる。DICは非常に戦略的な意図を持って動いていると思いますよ。当然、それは日本の産業に大きな魅力があるから。日本企業の力を日本人がいちばんわかっていない。

5 日本の経営者がそうした動きを嫌がることはないですか。

 株式公開したら経営者がどうのこうのっていう話ではないでしょ。経営者は会社の所有者じゃない。会社を動かすために必要なガソリン(資金)は原産地が日本でも中東だろうと関係ないんだから。

(書き手:中島順一郎 撮影:吉野純治)

いでい・のぶゆき
1937年生まれ。60年早稲田大学卒業、ソニー入社。95年社長就任、99年CEO、2000年会長兼CEO。06年に経営コンサルティング会社のクオンタムリープを設立。07年にソニー最高顧問退任。

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