恵まれているのに「不幸だ」と感じる人の目線 「足りないもの」を嘆いても幸せにはなれない

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筆者は後天的な視覚障害者である。過度なストレスが原因で20代のときに大幅に視力が失われた。その後は何年も失われた視力、つまり「足りないもの」を見て嘆くばかりだった。当時は「残された視力」、つまり「まだ手元にあるもの」の存在など気付きもしなかった。

その後カウンセリングの仕事を通じて、「足りないもの」を嘆く人を多く目にすることになる。結果、手元にあるものを見ることの大切さに気付かされた。残された視力はわずかだが不足を感じることはない。まだ光が見えることに幸せを感じるぐらいだ。少しのもので十分に満足できている、といえるだろう。

モノの豊かさや金銭的な裕福さにおいても同じである。過剰に欲しがることで、その代償として渇望感や恐怖心を味わうことになる。わずかなもので満足することは決して貧しさではない。「幸せに生きるための知恵」なのだ。

わずかなもので満足を得るには、まず他人と比べるのを止める必要がある。車、仕事、収入、配偶者、視力、いずれに関しても「これぐらいあって普通だろう」と思う暗黙の基準がある。その基準は周囲にいる他人のそれを元に決定される。他者と比べて多いか少ないか?ではなく、自分にとって十分かどうか?を基準にするのだ。その結果、過剰な欲望に振り回されることもなくなるだろう。

もちろん目標を目指して努力するのは悪いことではない。ただ、それによって不幸な人生を送る必要もない。重要なのは欲しがることと、満足することのバランスである。より多くを手にすることで得られる達成感、すでにあるものに対する感謝、双方をバランスよく楽しむことが本当の幸せだと筆者は考える。

本来は持ち合わせている「足るを知る」

大量消費が当たり前となった私たち日本人にとって、ムヒカ氏が教える幸福論は奇妙に映るかもしれない。しかし決して理解できない考え方ではないはずだ。なぜなら日本語には「足るを知る」という言葉がある。つまり「わずかなもので満足を得る」という文化や価値観は、もともと日本人が持っているものなのだ。

米国の世論調査会社ギャラップ・インターナショナルとWIN(Worldwide Independent Network of Market Research)による共同調査で発表している最新の「世界幸福度ランキング」によると158カ国中、日本は46位である。世界トップレベルの経済大国にも関わらず、決して高い順位とはいえないだろう。「日本人は本当に幸せですか?」。ムヒカ氏が放った衝撃的な質問に、あなたならどう答えるだろうか。

片田 智也 心理カウンセラー/LOGOSCOPE 代表

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かただ ともや / Tomoya Katada

大学卒業後、20代で独立するがストレスから若年性緑内障を発症、視覚障害者となる。同年、うつ病と診断された姉が自死。姉の死の真相を知るため、精神医療の実態と精神療法を探求、カウンセラーへと転身する。教育や行政や官公庁を中心にメンタルヘルス実務に参画し、カウンセリング実績はのべ1万名を超える。心理カウンセリングから、経営者、アスリートのメンタルトレーニングまで、メンタルの問題解決に広く取り組んでいる。著書に『メンタル弱い」が一瞬で変わる本 何をしてもダメだった心が強くなる習慣』(PHP研究所)

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