恵まれているのに「不幸だ」と感じる人の目線 「足りないもの」を嘆いても幸せにはなれない
傍目から見るとMさんは、十分に裕福な生活をしている。少なくともお金に困っている様子はない。それにも関わらず「とにかく私は不幸だ……」と彼女は訴える。「すでにあるものだけでは満足できない」のだ。
公共の職業訓練校で心理カウンセラーをしていた頃にも、やはり「手にしているものだけでは満足できない人」を多く見かけた。大学卒業後、4年半フリーター生活を続けたTさん(26歳男性)には、ずっと憧れの職業があった。それはWebデザイナーだ。
彼は「どうしてもWebデザイナーになりたいんです」と話していた。夢の仕事に就くため、勉強も就職活動も必死に頑張った。その努力が実り、ついにWebデザイナーとして内定を得るに至る。「夢が叶って良かったですね」と私も清々しい気持ちを感じたものだ。
夢を叶えた男が漏らした不満
しかし半年後、私はまたTさんの姿を見ることになる。せっかく就いたWebデザイナーの仕事を「もう辞めた」というのだ。バツが悪そうに、彼はその理由をこう述べた。
「忙しさに給料が見合っていない」「勉強を続けなければいけないので疲れる」「思っていたほど楽しい仕事でない」「ずっと続けたい仕事ではない」――。半年前の彼からすると驚くような発言ばかりだった。その後、また別の訓練を修了するが、就職することは叶わなかった。結局、彼は元のフリーター生活に舞い戻った。
MさんやTさんの目には、自身が手にしているものは映らない。彼らが見ているのはいつも「足りないもの」ばかりだ。何かを欲しがること自体、そう悪いことではない。しかし過剰に欲しがることは、すでにある幸せから目を遠ざけさせる。「足りないものにしか焦点を当てない」これは不幸さを訴える人の思考パターンだ。どれほど手に入れても「足りないもの」しか見えず、渇望感に苦しむことになる。
もう一つ、豊かさが人を不幸にする理由は「それを失う恐怖心」だ。宝くじの高額当選者は、豊かさと引き換えに人間関係で悩むことになる。その追跡調査によると当選後に疎遠だった親戚から連絡があったり、仲良くもない知人から相談が増えたりするそうだ。2005年には岩手県で、宝くじに当選した女性が交際男性から殺害されるという事件が起きている。
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