緊迫!シャープ “最大の赤字事業”に踏み込まず 迫力不足の「実抜(じつばつ)計画」
はたして、これで“実抜(じつばつ)”といえるのか。
9月24日、シャープは銀行に「実抜計画(実現可能性の高い抜本的な経営再建計画)」を示した。すでに8月、国内約2000人の希望退職を含む人員削減、太陽光発電事業の縮小、海外テレビ工場の売却を主とする経営改善施策を打ち出していた。だが、その後も増え続ける融資に危機感を募らせた主力2行(みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行)が、シャープにさらなる改革案の提示を迫っていた。
8月10日からの1カ月間、コンサルティング会社がデューデリジェンスを実施。「『提携先の鴻海(ホンハイ)精密工業に海外のテレビ3工場(メキシコ、中国、マレーシア)が売却できた場合、最大で1万1000人規模の人員削減が可能になる』など、8月案に具体的な数字のメドを織り込んだ」(関係者)。
2010年に約3億ドルで買収した太陽光発電の米リカレント・エナジー社の売却、東芝株をはじめとする複数の保有株の売却方針も固めた。
「メキシコと中国はさておき、郭台銘・鴻海董事長はマレーシア工場には興味が薄い」「そもそも出資交渉が難航し、トップ会談も3月以降行われていないのに、工場売却という別案件だけが先に進むかどうか怪しい」(いずれも業界関係者)──。こうした指摘もある中、シャープは主力2行と実抜を作成。9月最終週に、生命保険4社、りそな銀行や地方銀行など取引のあるすべての金融機関に提出し、協調融資を願い出た。
9月末、主力2行は13年6月末を期限とする1800億円の融資(8月末の1500億円の振り替え分含む)に踏みきり、1800億円の融資枠も新たに設定した。今期だけで計3600億円規模の追加融資となる。10月以降、他金融機関の決定を待ち、順次、主力2行の負担を分担していく。
シャープは過去、短期の資金調達手段であるコマーシャルペーパー(CP)を発行してきたが、格下げに伴い、新規発行は7月以降ほぼ止まっている。6月末に約3600億円あったCP残高は9月時点で約2000億円まで減少した。
代わって資金繰りの支えとなっているのが主力2行からの借り入れであり、CPの減少分を補ってきた。それでも今後のCP償還や運転資金を考えると、「放っておけば年末までに2000億円近くがショートする計算だった」(金融筋)。