海外メジャーの賞金は日本ツアーから外そう 優勝で即「日本の賞金王」になるのは不公平だ

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筆者の記憶でいちばん印象に残っているのは、決定以前、メジャーの試合と国内の試合が重なり、1試合だけ行くにしても、びっしり埋まっている前後の週に影響することもあり、せっかく資格のある選手が出場に二の足を踏むということが問題になった。このため、メジャーに出場したらその賞金も加えようという議論が起こったということだった。

1998年以降、多くの選手がメジャーに挑戦している。優勝争いをした選手も多い。ただ、勝てなかっただけで、もし勝っていればその年の賞金王がその時点で決定してしまうという事態になっていただろう。全英オープンもまだ賞金総額が出ていないが、今季メジャー4試合の賞金総額は4000万ドルほどになる。これは、今年の日本ツアー26試合の賞金総額約35億円を上回る額だ。

いわば日本ツアー2つ分以上の賞金総額で日本ツアーの賞金ランクを争っていることになるのは、物差しとしてはちょっとおかしい。その賞金ランクによって翌年試合に出られるかどうかが決まる。日本ツアーの賞金ランク加算対象からメジャーは外していいのではないだろうか。まったく別のツアーの賞金が日本ツアーの賞金ランクを左右するのは、公平な基準ではない。

整合性を取るのは選手のためでもある

この10年で試合数が減ってきたおかげで(?)日程に余裕があり、すでにメジャーの週に日本ツアーの試合は入っていない。前後に空き週もあるので日程に問題はない。若い選手たちの中に「メジャーに出たい、勝ちたい」という気持ちが以前より強く感じられるので、日本の賞金ランクに加算されなくても、せっかくの出場資格を放棄することもないだろう。

松山のような米ツアーメンバーなら日本のランクに影響はないが、日本ツアーメンバーとして出場する選手も多い。誰にでも優勝のチャンスはあるわけで、その可能性は高くなってきているのなら早く整合性を取ったほうがいい。まだメジャー加算が残っているのが不思議だし、それがグローバル化に逆行するということではないと思う。

メジャーを出場資格に絡めるのであれば、優勝なら永久シード権(日本シニアツアーでは井戸木鴻樹が全米プロシニアに勝って新設)とか、メジャーのみの生涯獲得賞金ランクを作って日本に戻ってきたときに行使できるとか、将来につながる資格に結びつけるほうがやりがいがあるはずだ。

JGTOでは今年から青木功が会長、尾崎将司が特別顧問になった。ともに70~90年代に日本と海外を行ったり来たりしながらメジャーへの挑戦を続け、優勝に迫った。日本ではもちろん優勝したし、シード権を失ったことはなかった。当時はメジャーの賞金ランク加算はなかったし、あっても出場する判断には関係なかっただろう。そんな2人の経験を基にすれば、国内で戦う選手、海外に行きたい選手、それぞれにわかりやすい基準が作れるはずだ。メジャーで活躍したら日本ツアーに水を差す、なんていうのは本末転倒の気がする。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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