期待役割と陥りがちな思考の罠とは?

ミドルリーダー座談会-Part1

 

■部分最適や自分最適に陥らないために、ビジネスシステムを理解する(戸津)


井手:ミドルが陥りがちな落とし穴として、もう一つ挙げたいポイントが「頑張りすぎてしまう」というものです。これは優秀な方ほど陥りやすいように感じるのですが、とにかく視野が狭いままに凄く頑張った結果、会社の方針からズレて部分最適に陥ってしまうという・・・。分かりやすい事例でいうと、全社ポートフォリオから考えると縮小均衡に入っていく領域の事業であるにも関わらず、よそからリソースをぶんどってきて「来年までに業績を1.2倍にします!」とか(参加者笑)。頑張ることは悪くないのですが、全社的な視野を伴うことが大前提ですよね。全社の戦略から考えると、「今はリソースを海外に持っていかなければいけない時期だから、この部署にはなるべく少人数で継続的に業務をまわせるように仕組みを作ってほしい」ということが期待されている中で、逆をやってしまう。本来のミッションが何か、全体を俯瞰して考えてみることが本当に重要と思うわけです。

戸津:わりと、目先の数字を伸ばすことに拘泥する傾向はありますよね。

井手:そうなんです。しかも、それで自信を持ってしまう(笑)。で、「こんなに業績を伸ばしたのに、なぜ会社は俺を評価してくれないんだ」、と。特に国内ではそういうケースが多いですね。環境的に「成熟した市場で解を出さなければいけない方々」が母数として増えているわけですから。

荒木:キーワードとしては、視野の広さ・深さ・長さと、部分最適といったあたりになりそうですね。全体最適ではなく部分最適になってしまう、と。ほかにも類似事例はありますか?

井手:例えば「サービスレベルを上げて顧客満足度を高めよう」などという方針が出た際、いきなり顧客接点を充実させるために採用を増やす、というようなケースでしょうか。将来の人口減少を考え、「利益が上がっている今のうちにシステム投資をし、少人数でもサービスレベルを維持できる体制を敷こう」というような長い視野での解も持ち得ると思うわけですが、部分的にしか戦略を捉えられないミドルリーダーは、あそこにもここにも人を配置しましょうという話になってしまうのです。それで、「顧客満足度がこれだけ上がったので、今年の目標は達成!」みたいな(笑)。

戸津:同じようなことは当社にもあります。例えば「牛角」の商品開発や企画の人たちが「お客様に喜んでもらえそうなメニューを開発した」と、一所懸命になって良い肉だとか珍しい食材だとかを探してきてくれたとしましょう。その結果、全体として何が起きるかというと、まず当社はグループで物流まで全て担っているので物流効率が落ちます。また、新しい食材を入れたら逆に購買しなくなる食材も出てきますよね。すると、購買しなくなったのと同じ食材を使っている別業態の例えば「しゃぶしゃぶ温野菜」側の価格交渉力が落ちるという結果に結びついたりする。そうした、部分的な意思決定が全体に影響を及ぼす、ということは常にして起きえます。

それは戦略思考の問題というより、知識あるいは見えている範囲の違いによる問題という風にも、捉えられると思います。ただ、持てる知識や情報量の差を考慮してもまだ、確かに部分最適に陥りがちという傾向はあるように感じます。言い換えれば、今自分がやっている仕事が全体のどの部分かを認識する力が弱いというか。結果として“自分最適”に突き進んでしまう。単に個人のプレイヤーとしてではなく、自身の仕事を全体の中に位置付けながら、その動きに連動して目標設定する意識がミドルリーダーには不可欠だと思います。

井手:戸津さんから物流の話も出たので、好例としてファストファッションで著名な「ZARA」の話を。ZARAはグロービスの経営戦略のクラスでも取り扱われていますが、全体最適が貫かれている企業だと思います。グローバル展開している同社では、工場から製品を航空便で送ることが多いです。これを部分最適になりがちな物流担当の方が捉えれば、「コスト削減のために船便に切り替えろ」という話が出て来てもおかしくない。しかし一段レイヤーを上げて、「ファストファッションという戦略をいかに物流機能で実現するか」と考えれば、当然ながら得られる答えは変わってくる。

戸津:そういうことをちゃんと考えるためには、やはりビジネスシステムをきちんと理解していていることが極めて大切なのですよね。すべての状況を細かく知る必要はないにしても、意思決定時のプライオリティをビジネスシステムのなかできちんとつけられるかが肝になると感じます。

 

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