期待役割と陥りがちな思考の罠とは? ミドルリーダー座談会-Part1
■「問い」自体を疑う力を鍛える(藤井)
藤井:人間関係や自分の見栄が優先事項の上位にある方というのは、おそらく戦略上の「成果」を正しく理解していないんだと思います。私がよく当社の取締役などと話しているのは、本当の意味での成果志向であればMBO(Management by objectives)に設定している年間の目標値だけではなく「自分がどういった成果を出すべきなのか」をきちんと理解している必要があるということです。そこを理解していたら部分最適にも陥らないと思います。会社に対してどういった成果を出すべきなのかを、本当はきちんと設定出来ると思うんですね。
戸津:与えられた目標ではなく、ということですよね。
藤井:はい。例えば目標の一つが「顧客満足度の○○%向上」として、それを達成したとしても、同時に固定費が想定以上に上がっていたら駄目なわけですから。そこでご本人が成果の設定をきちんと出来ていないとき、上の人はきちんとサポート出来ていたのか、という視点でも色々と議論が必要かもしれません。
戸津:MBOがミドルの戦略思考の幅を狭めている可能性は否定しきれませんね。
井手:そう思います。実際、お会いする役員の方で「それはMBOの弊害だ」というような表現をされる方もいらっしゃいますよ。
藤井:MBOという方法論自体、簡単に否定すべきものではないと思いますが、ただMBO導入のみで管理をしようとすると、弊害は出ますよね。MBOに加えて補助ツールと言いますか、MBOとコンフリクトしない別のものを何か入れておくか、MBOの運用改善をしていかないと、目標値だけを見て仕事をしてしまうようになると思います。
荒木:つまり、MBO自体の問題というよりは、なんというか、考えさせる連鎖がなく、数字がひとり歩きすることが問題なのでしょうね。
藤井:そうですね。人事の立場で考えますと、運用が上手くいっていない、という思いがあるんです。仕組みが悪いというより、運用がかなり難しいのではないかと思います。
井手&戸津:そう。難しいですよね。
藤井:MBOは本来であれば「自分で立てた目標に対して自分で実行する形で、自己管理をしながらやっていきましょう」といったツールなのですが、最近は上から押し付けられた数字が多いですよね。その時点で破綻しているのかな、とは思います。
さらに言えば、これだけ変化が激しい世の中では、戦略の方向転換に合わせて即時に個々人の目標も書き換えなければならないわけです。なのに、半年や1年に一度の査定時にしかあの用紙を見ないというような(笑)、そういった状態であれば、これは運用がまったく出来ていない、としか言えない。
荒木:たとえば「売上目標3000万円」という数字が降ってきたとき、何を考えるかだと思うんですね。普通の人は、3000万円をどのように達成するかというところから考えます。まず3000万円ありきで、それをどのように達成するかというシナリオをずっと考える。それを考えるのが自分の使命だと思っているんですね。