貧困問題を解消するには、空き家を活用せよ 「下流老人」著者が提言する格差是正の処方箋
「家賃を払うと、生活資金が手元に残らない。いったいどうすればいいのか……」
東京都内に暮らすAさん(32)は頭を抱えている。Aさんは現在、非正規労働者として働く。月の収入は手取り約16万円。家賃7万円のアパートに妻(30)と子ども(3)の3人で暮らしている。妻は子育てに追われ、働く時間が取れない。毎月の収支は赤字で、足りない分は貯金を切り崩しながら生活をしている。ただ貯金の残高は約60万円と決して多くはなく、このままではゼロになるのも時間の問題だ。
重くのしかかる家賃負担
私は昨年、『下流老人』(朝日新書)を発表して多くの方から反響をいただいた。だが貧困問題は何も高齢者に限った話ではない。日本の相対的貧困率は2013年時点で16.1%、いまや6人に1人が貧困状態にあり、誰もが陥る可能性がある。
トマ・ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房)やアンソニー・B・アトキンソンの『21世紀の不平等』(東洋経済新報社)に代表されるように、世界でも格差や貧困に対する研究が進み、新自由主義から分配重視へトレンドが移っている。ここでは日本特有の貧困問題についてまとめてみたい。
生活が困窮する大きな原因のひとつが、冒頭のエピソードのような「住宅」の問題だ。私が所属するNPO法人「ほっとプラス」には年間500件以上の相談が寄せられるが、家賃の支払いで追い詰められているケースが非常に多い。
データで見ても、生活困窮者にとって家賃の負担は大きな重荷になっている。たとえば、2014年12月にビッグイシュー基金の住宅政策提案・検討委員会が実施した調査「若者の住宅問題」(首都圏と関西圏に住む20~39歳、未婚、200万円未満の個人を対象)によると、手取り月収から住宅費を差し引いた金額であるアフター・ハウジング・インカムがマイナスになる人が27.8%も存在する。プラスのグループにおいても「0~5万円未満」が17.0%、「5万~10万円」が32.9%と、低水準の人たちが多い。
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