正しくサボらないと仕事は効率的にならない 意識の高い日本の人事制度にモノ申す
そこでカヤックは企業研修にあえて「サボり方研修」というネーミングをつけ、「ゾーンに入る、フロー状態になることを健康と捉え直した」(三好氏)。極限の集中状態に入ることだ。
研修の一貫で行われた具体策を検討するブレスト会議では、ゾーンに入るための支援策が幾つか起案された。そのひとつが「雑務カフェ」だ。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究では、「レンガの本来とはまったく異なる使い方を発明してください」というクリエーティビティを測るテストで、休憩中にルーチンな作業を無心に行なったグループが最もクリエーティビティを発揮したことが明らかになっている。
雑務カフェはその仕組みを利用して、雑務を共有スペースに置き、無心になって雑務を処理することでリラックスを生み、集中力を高めるというものだ。「雑務はクリエーティビティを高める」というエビデンスのもとに、正々堂々と休める空気作りに寄与するだけでなく、雑務も処理できる。
人事制度も“ノリ”が必要
一方でフロー状態を推奨することは、リスクも伴う。フロー状態、ランナーズハイの状態に入った人間は、得てして自分で歯止めを効かせられない。「『休めない』日本人の生産性が著しく低い理由」(2015年10月31日配信)でも言及したが、ランナーズハイの状態は、疲れ果ててダウンする寸前の脳を、あたかも「まだまだできる」とだましてしている状態でもあるため、うつ病など回復に長い時間を要する病気になってしまう危険性もある。組織としては、フロー状態のクリエーティビティの高さは生かしつつも、それが長期化することのリスクは当然避けねばならない。
最近ではウエアラブル端末の普及によって、運動量や心拍、睡眠状態などさまざまな生物的指標を手軽に計測できるようになったため、それらを駆使して歯止めを効かせることも選択肢だが、どのような指標を基準に、アラートを鳴らすべきかに関しては、私たち専門家の間でも未だ解を導き出せていない問題だ。
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