独断!東京一「子育てしやすい街」はどこか 自然の豊かさや子育て支援以外の視点で判断

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一方、仙川地図研究所が作った「見る知る歩くせんがわ地図」はちょっと違う。仙川に移り住んで9年目、地元のミニコミ誌編集に携わってきた所長の小森葵氏によると、仙川周辺ではここ2~3年、ミニ四駆を楽しめるカードカフェやハンモックヨガなど30~40代が中心となって独創的な店を出す例が増えているものの、地元では意外に知られていない。

そこで「色んな面白い人がいて楽しい街であることを知ってもらいたい」(小森氏)と考え、2013年にニワコヤの笠原夫妻と3人で一緒に地図を作ろうと計画。2014年4月に初版1500部を発行した。

地図は表面に寺社や緑地、農産物の直売所など幅広いお勧めスポットが描かれており、裏面には街歩きのついでに寄り道してほしい店、ギャラリーなどを掲載。裏面は1店5000円で広告を集めた。古い店の中には「そんな地図、誰が見るんだ」と広告営業に対してけんもほろろな店もあったようだが、広告は無事59店集まった。

初版の1500部は200円とはいえ、有料であるにも関わらず、発売後20日で完売。その後、5月と10月にも2000部ずつ増刷したいずれも売り切れ、現在は昨年11月に刷り増した500部が200部ほど残っている状態だという。

作り手が楽しんで作っている

集まった地元の人々が地図を勝手に作って販売、それをもとにしたイベントや街歩きまで開催している

行政などが作った地図と大きく異なるのは、作っている人たちが街歩きや地図作りを好きで楽しんでいることが伝わるという点だ。

実際、製作者たちはすべての道を歩き回り、細かく取材をする。ネットで集めた情報だけで街の紹介記事が作れる時代にあっても、実際に自分の目で見て、聞いてきた情報との差異は見る人が見ればわかる。

現在、活動に参加しているのは調布に住む30代~40代中心に上は70代まで幅広い年代の14人。この活動をきっかけに調布に引っ越してきた人がいたり、60年以上住み続けている人がいたりと参加者は年齢、職業、性別もさまざま。子ども、ベビーカーOKという街歩きイベントも開催されており、子ども連れにも楽しい活動である。

調布の「盛り上げ役」として活動するのは調布企画組だ。ウェブ制作会社代表の長尾純平氏中心に映像制作や料理が得意な地元住民4人が集まって、マルチな活動を行っている。活動を始めるきっかけとなったのは、2014年10月に調布市が防災訓練の一環として行ったマッピングパーティで、参加者がこのイベントを記録・住民に伝えようとしたことだった。

マッピングパーティとは、あるテーマに沿って地図情報を集め、それをオープンストリートマップ上に落として共有するというイベント。この回では、調布市のどこにAEDがあるかを参加者が訪ね歩き、地図化。約300人という、マッピングパーティとしては世界でも最大規模となったイベントが生み出したのは災害時に役立つ情報で、それを長尾氏が映像化しようと考えたのである。

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