このように、医療・福祉分野では雇用者数が大きく伸びていて、かつ、これからもより多くの人材が求められると予想されるのですが、現状では男性雇用を吸収する受け皿になるとは考えづらいのです。
むしろ、この分野で女性が多数雇用され続ければ、男性との失業率との差を広げることになり、「労働市場における男性の価値の低下」をさらに加速させることになるのです。これが二つ目の原因です。
三つ目の原因が、女性の社会進出が本格化したことです。
97年ごろまで、大学卒業者の就職内定率は明らかに男子に有利で、3%程度の差が女子との間についていました。
ところが、2000年代に入ると、その差は徐々に小さくなり、04年には初めて女子の内定率が男子を上回りました。その後は抜きつ抜かれつが繰り返され、今ではほぼ同一の水準が保たれていますので、就職難易度の男女間の差はほぼなくなったといえるでしょう。
男女格差が縮んだのは、男の給与が激減したから
就職率のみならず、賃金についても男女の差は年々縮まってきています。ちなみに、世界の男女の賃金格差を見ると、アメリカやヨーロッパ諸国ではすでに女性の賃金は男性の75~80%程度まで上がっています。一方、日本の場合、差は縮まってきてはいるものの、女性正社員の賃金は依然男性の70%程度の水準です。
今後、日本でも女性の社会進出がさらに進み、欧米並みに近づくことになれば、賃金水準も連動し、今以上に男性との賃金格差が小さくなることでしょう。
男女間の賃金格差が縮まる理由が、女性の給与が増えたことだけなら喜ばしいですが、実態は男性の給料が激減したことにあるので、男性にとっては喜んではいられない話なのです。このように「男性不況」は着々と進行し、気がつけば男性失業率が女性失業率を大きく上回る事態に陥っています。
しかも、日本での男性の雇用環境は、改善の兆しが一向に見えていないのが現実です。
すでに「男性不況」は現実のものとして、われわれの生活の至る所にその影響を及ぼし始めています。しかも、日本特有の事情が重なり、今後はさらにそれが深刻化することが予想されています。
本連載では、「男性不況」が引き起こした日本社会の大きな変質について、解説していこうと思います。
編集協力:王地築(ライター)
※ 連載の続きはこちら:
第2回:「男性不況」が、所得格差の犯人?
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