日系LCC、3社そろって黒字化でも尽きぬ不安 経営が安定飛行へ移るには難題が残っている
一方のバニラは、台北と東南アジアを結ぶ路線を、早ければ今年中にも開設する。2020年までに保有機材を約3倍の25機に増やす計画で、売上高も700億円強を視野に入れる。「海外のLCCとの提携も検討中」(石井前社長)という。
とはいえ、こうした拡大路線に不安がないわけではない。ネックとなりそうなのが乗員確保の問題だ。
2014年6月には、バニラで機長クラスの乗員が不足し、150便超の計画減便が発生。ピーチも半年間で2000便超を減便した。世界的なパイロットの取り合いで、採用が進まないところに、病欠や退職が重なった結果だった。
その反省を受け、LCC各社は国内航空会社からの転職組や外国人、操縦免許の保有者を積極的に採用し、人材育成を進めている。バニラの機長数は当時の2倍以上に増えており、その後は乗員不足による目立った減便はない。
乗員確保は依然としてネック
それでも、航空経営研究所の森崎和則・主席研究員は、「人繰りはまだまだ綱渡り」と指摘する。今夏には、中部国際空港を拠点とするエアアジア・ジャパンが就航し、需給はさらに逼迫しそうだ。
人手不足の解消には、乗員の賃上げも有力な選択肢。だが、「東南アジアのLCCのユニットコスト(1席の1キロメートル当たり運航費用)は4円台。バニラは6円台に下がってきたところ」と、石井前社長は明かす。
これから国際線を強化すれば、東南アジア勢との競争激化は必至。人手確保とコスト低減という二つの課題を解決するのは容易でない。
3社そろっての黒字化が視野に入り、業績面でも離陸体勢に入った日系LCC。さらに収益の高度を上げ、安定飛行に移るには、分厚い雲をくぐり抜ける必要がある。
(「週刊東洋経済」2016年4月2日号<3月28日発売>「核心リポート03」を転載)
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