曲がり角のネット証券、手数料値下げに限界

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ハイパートレーダーを値上げで締め出し

関係者の話を総合すると、もともとハイパーデイトレーダーを最も多く抱えていたのはジョインベストだった。しかし値上げ後は、SBIへ大量移動。SBIも手を焼いて値上げすると、今度は岡三オンラインやクリックに移っていった。手数料の安いネット証券を求めて、次々と取引先を変えていったのだ。

SBIの顧客約6000人が岡三オンラインに流れたともいわれており、右肩上がりで拡大してきたSBIの足元のシェアは伸び悩んでいる。一方で、SBI証券の2009年4~6月期の連結営業利益率は30%台と、前年同期の27%台から改善。「いずれも値上げの影響だろう」と関係者は指摘する。顧客増を受けて岡三オンラインの売買代金は以前の3~4倍に増えたが、逆に赤字幅は拡大したようだ。

1999年の全面自由化以後、ネット証券は株取引の手数料を次々と引き下げた。後発のジョインベストや岡三オンライン、クリックは、激安手数料を武器に新規参入。取引頻度の高い個人投資家を取り込んでボリュームを確保すれば、利益はついてくるともくろんだ。

こうした投資コストの低下が、ハイパーデイトレーダーを生んだ。だが今や安すぎる手数料は、収益の圧迫要因となっている。一方で、松井証券やカブドットコム証券などは、手数料競争から距離を置き、高い利益率を確保している。値下げを競ったSBIや楽天の値下げ幅も、3000万円超の約定代金ベースで見れば300円弱にすぎない。ネット証券の激安手数料戦略は限界を迎えている。

(武政秀明 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

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