木本:目的は豊かな国にするためでしょうか。それとも国民の士気を高めるためでしょうか。
美根:両方ですね。経済的な意味での豊かさには直接は繋がりませんが、国民が元気に仕事することは、経済的にも大事なので一体です。金一家のためだけでなく、やはり国民全体への影響という大きな目的でやっています。
木本:とはいえ、彼らが普通の国らしいことをちゃんとやっているということを知れば、印象もちょっと変わってくるかもしれませんね。
意外にも金正恩には国際感覚がある
美根:私は金正恩のファンではありませんが、彼のやっていることを、事実として、きちんと見るべきです。昨年7月に平壌の空港ターミナルビルが新しくなりましたが、金正恩は完成まで何度も視察しています。
かつて私が北朝鮮に行った時の空港ビルはひどいものでしたが、立派なものを作った。こうした施設を作る場合、自ら出向いてチェックするのも金正恩なんです。
木本:それは知りませんでした。なんでそれを隠すのでしょうか。
美根:隠しているわけではないですよ。日本でもきちんと報道されています。しかし、メディアが簡単に入れないのは事実です。入ると、記者の動きをコントロールするのが大変だからです。入ったメディアはいろいろ見たい、でも体制側は厳重にしないと何を映すかわからないからコントロールしようとする。
木本:あれはOK、これはダメとやることが難しいから、一斉にダメにしているんですね。
金正恩が今やっていることを会社にたとえた場合、一族経営で、息子から孫が経営する時代になって、ちょっとは社員の生活も真剣に考え始めているというイメージでいいんですか。
美根:そういう面はあります。金正日は一風変わったところがありました。彼の趣味は乗馬や映画鑑賞です。韓国の映画監督を香港で拉致したこともある。日本の鮨職人を連れていました。一方、金正恩は若い人の趣味、国際的な感覚があるように見える。
木本:そうなんですか。知らなかったです。
美根:正日に比べればまともです。では、その人が、ひどいことするのはなぜか。その理由に、正日が急死したため、継いだのが20代後半で、準備不足だったことがあります。後継者には決まっていても、長男じゃなく三男で、若く経験が乏しかった。乏しいなかで難問ばかりの北朝鮮において、指導力を見せつけ、確立するために少々ひどいこともやらざるをえなかったのでしょう。
木本:若さゆえの焦りがそうさせたわけですね。
美根:処刑された張成沢は中国との関係をほとんど一手に押さえていた。叔父さんからすると、若造に何ができるんだという思いがあり、しかも身内ですから、上からの目線になっていた。正恩を甘く見ていたのでしょう。
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