木本:それでも処刑してしまう国なんですよね。叔父を処刑して、代わりに新しい中国との窓口となりうる人はいるんですか。
美根:張成沢に変わるような人材は出てきていません。ですから中国との関係はものすごく落ちています。それでも貿易は今でもかなりある。
おそらく、正恩の希望は自分が全部をコントロールすることでしょう。自分の権威にチャレンジするものは許さない。しかも若いから極端な形で出てしまうところがある。
木本:会社で考えると、いい会社じゃないですよね。
美根:そう。そしてなにより国の名前とは違って「民主主義」ではない。なにが起こるかわからない、そのような危険が北朝鮮にはあります。
木本:う~ん。どうにも、いい方向に向かっていると総括できませんね。
アメリカは北朝鮮をつぶしたい?
美根:善悪両面あって、非常に危険なことが起っている一方、正恩という若い独裁者の指導力を確立するという面では前進していると言える。それは内政の部分です。問題は外交なんですよ。
木本:核実験をして、ミサイルを日本海に飛ばす。そのやり方は変わっていない。アピールはそこしかないということなのでしょうか。
美根:基本的に、彼らの外交姿勢は変わっていません。彼らの望みは、繰り返しになりますが、北朝鮮の存続なんですね。今の体制を固定したい。その点は、これまでにもある程度前進しています。1991年に国連に韓国と同時加盟を果たしましたが、アメリカとの関係は1953年に朝鮮戦争が休戦になった時と何ら変わっていない。つまりいまだ休戦状態なわけです。
木本:いまでも一触即発という意識があるわけですね。
美根:正恩は怒ると「いつでも戦争状態に戻る」と言うそうです。ただ法的にも政治的にも北朝鮮の地位は未確定です。そのため、彼らの外交戦略は、北朝鮮の地位を確定させることにあるのです。
木本:世界は、北朝鮮をどうこうしようなんて、考えていないのではないでしょうか。北朝鮮側がミサイルを撃たなかったら、なにも言わないような気がしますけれども。
美根:そこが我々と認識がずれているんですね。たしかに日本では誰もつぶすなんて誰も思っていないかもしれない。一方でアメリカ人はどうなのか。ここにはクエスチョンマークがつきます。
ブッシュ大統領(子)の時代。悪の枢軸としてイラク、イラン、北朝鮮を名指ししました。その後イラクは滅ぼされた。いまイランとは仲良くなりつつある。北朝鮮はそのまま。アメリカには北朝鮮こそ世界の悪の根源という意識がある。アメリカは1994年に北朝鮮への軍事侵攻が利益か不利益なのかを検討したことがありました。ただ、あまりにもアメリカ軍の被害が大きくなるという結論だったので、取りやめました。これは有名な話です。北朝鮮は、真剣にアメリカの軍事侵攻を恐れているのです。
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