中国のおむつ市場「激変」、花王がECで席巻 転売騒動の裏には日本製への圧倒的人気が
もっとも、同じ日本メーカーでも振り向いてもらえるのは、現地製より日本製。「中国製は、まだ導入していない最先端技術で開発したが、メインで売れるのは日本製」(花王の澤田道隆社長)。
一般に中国人は自国製品への不信感が根強いとされ、特に子ども向けでは、多少高くても日本製を選ぶとされる。それも近年は実店舗に並ぶ製品でなく、発売元が明記されたEC上の製品を好む。今や紙おむつにおけるECでの購入比率は4割に高まった。
そうした市場環境変化を背景に、急速に先行者のシェアを食っているのが花王だ。2009年に輸出を始め、中国人間の口コミで評判が拡散、紙おむつの含まれる一般消費財事業の売上高は3年間で3倍超になった。最後発ゆえECシフトにも機敏に対応。今年末には、実店舗の流通で提携した大手日用化学品の上海家化と契約を解消し、ECへの投資を一層拡大する。
工場を日本に戻すユニ・チャーム
一方、日本勢で先発のユニ・チャームは一時シェアを拡大させたものの、ここ2年ほど伸びが鈍化。同社の場合、日本製で高価格帯の「ムーニー」と、現地製で中価格帯の「マミーポコ」の2ブランドを併売する。ただ、少し前まで成功の原動力だった現地工場と広い店舗網は、早くも足かせになってきた。
ユニ・チャームの海外展開は地産地消が基本だ。中国では上海など5工場を構える。卓越した営業力で、都市部に加え、内陸部の小規模店も網羅してきた。だが前期はEC化の進行で店頭在庫がだぶつき、現地工場の稼働率も5割に下落。中国ベビーケア事業は赤字転落した。シェアも花王に僅差まで詰められた。
「今後は遅ればせながら、ECに経営資源を集中する。二人っ子政策への転換を追い風に、一人目は日本製、二人目は現地製で訴求したい」(ユニ・チャームの高原豪久社長)。現地工場の生産設備も日本に移管する。
変化のスピードは速い。自国内の製造業を強化したい中国政府としては、4月にも越境ECの税率を上げる予定だ。増税後の税率によっては日本製の競争力も厳しくなる。想像以上に進む中国景気の失速も気掛かりだろう。目まぐるしく主役が入れ替わる中国の紙おむつ市場。変化への適応力に優れた者のみが生き残る。花王も勝者で居続けられる保証はない。
(「週刊東洋経済」2016年3月26日号<22日発売>「核心リポート03」を転載)
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