マイナス金利の本質を知らない人は損をする ビジネスマンが「経済学」を学ぶ意味

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その結果、単身向けのワンルームマンションは、良質なものがたくさん供給されますが、若いファミリー世帯向けの広めの住宅はなかなか供給されません。

また、中古の住宅を賃貸で貸すことも難しくなりますので、中古住宅市場が育ちません。空き家が多い一方で、狭いワンルームマンションばかりが供給されるといういびつな状況になります。

経済学では、こうした賃貸契約の悪い結果を分析できます。実際に、多くの経済学者の指摘によって、賃貸契約が一部見直され、定期借家権(一定期間の契約が必ず賃貸契約を終了できるというもの)ができました。しかし、まだまだ借り主の権利保護が強いので、潜在的な借り手は損をしています。

経済学を学ばないのは「無知のリスク」

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ビジネスの世界でも、絶対的な正解はありません。かのウォーレン・バフェットも「リスクが生ずるのは、自分が今やっていることが何かを理解できていないときだ」と言っています。

経済学のロジックを身に付けないままで何かのビジネス上の意思決定をすることは、まさにバフェットのいう「無知のリスク」そのものと言えるでしょう。

何事にもメリットがあれば、デメリットやコストもある。目先の目に見える損得だけを考えるのではなく、目に見えない効果まで考えて意思決定をする必要があります。

経済学的な思考方法を身に付け、想像力と論理的思考力を鍛えておくことは、今後さまざまなビジネスの意思決定の場面で何らかの選択を迫られたときに、きっと役に立つはずです。

井堀 利宏 東京大学名誉教授

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いほり としひろ

東京大学名誉教授、政策研究大学院大学教授。東京大学大学院経済学研究科元教授。
1952年、岡山県生まれ。東京大学経済学部卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士号取得。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授を経て、1994年、同大学教授。1996年、同大学院経済学研究科教授。1993年、東京大学経済学部助教授。1993年~2015年の22年間、東大の経済学部及び大学院経済学研究科で教鞭をとる。2015年4月より政策研究大学院大学教授。

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