「盛れてる」と「盛りすぎ」には境界線がある

「シンデレラ・テクノロジー」とは何か

「外見を加工するだけではなく、SNSなどの“ソーシャル・ステージ”で自分を見せることまでを含めてシンデレラ・テクノロジーだと考えているんですが、それをもっと広義に考えると、アイデンティティを人工的に操る技術ということもできます」

研究を続ける中で、衝撃的なイベントと出会った。『ヒロイン・フェイス・コンテスト』だ。

プリクラ画像とリアルな顔のズレ

自身も“盛り”にトライ。研究過程で何度もプリクラを撮影した

『ヒロイン・フェイス・コンテスト』の概要はこうだ。まず、応募に使用されるのはプリクラ画像。デジタル処理で誰でも目が大きく、肌も白く、可愛くなれるように開発されたプリクラの画像で、第一審査が行われる。2012年のコンテストでは、そこに26万人の応募があったという。まずは全国のゲームセンターにあるプリクラ機内での投票で各プリクラ機の1位が選ばれ、次にネット上の一般投票によって上位20人が選ばれる。そして、その20人がリアルな舞台に集まり、芸能プロダクションの関係者などを前に最終選考をするのだ。久保も最初にその概要を聞いたときは、「いいのかな、リアルに集まって…」とひやひやしたようだ。たしかに、危険な匂いがする。

「最終選考を見に行かせてもらったら、やっぱり実物とプリクラの画像は全然違っていました。でも、全員が最終選考に来て、みんなイキイキと歌や踊りを披露していたことが印象的でした。女の子たちにとってプリクラの顔と実物とが全然違うのは悪いことではなく、それ以上に大事なことがあるのだと気づきました」

自分の顔。つまりは、バーチャル・アイデンティティにおいては生まれながらの顔は関係なく、極端な話をすればどんな外見になってもいい。だから女の子たちはプリクラで加工し、またプリクラのシャッタータイミングなどを的確に読み取り、完璧なイメージを創出するための努力をする。努力が報われるバーチャル・アイデンティティでの成功を活かして、リアルの世界の夢の実現を求めることが、女の子たちにとっては大事なのだとわかってきたという。そして、コンテストの参加者に「どうして盛ることを頑張るのか」を取材すると、意外な答えが返ってきた。

「男性によく思われたいのかを聞くと、『全然違うこともないけど、そうということではない』という答えが返ってきて、女の子同士での目を気にしているのかと質問すると、やはり同じような感じなんですね。それで最終的に行き着いたのが、“自分らしくあるため”という答えだったんです」

久保は、「なんでみんなが同じ顔を目指すんだろう」というところに興味を抱いて研究を始めた。浮世絵も同じ顔に見えるし、ギャル雑誌やプリクラに写る女の子たちを見ても見分けがつかない。しかし、女の子たちはそこに「自分らしさ」を感じていると言うのだ。女の子たちに取材を続けると、みんなが外見を加工して同じ顔を目指しているわけではないことがわかってきた。

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