「盛れてる」と「盛りすぎ」には境界線がある

「シンデレラ・テクノロジー」とは何か

「外見を加工することは大事なんですけど、加工しすぎは絶対にダメなんですよ。加工することで別人になることは良いこと。だけど、『盛れすぎ』はダメ。目もただ大きくすればいいというわけじゃなくて、加工をし続けると、急激に別人感が出てくるタイミングがあるんですね。私は“盛れすぎの坂”と呼んでいるんですけど、その直前のギリギリの線が『盛れてる』状態。女の子たちはそこを狙っているんです」

どうやってつけまつ毛をカスタマイズしているのか。プリクラのシャッタータイミングと画像処理の仕方をどうやって読み込んで、自分のベストの顔を写すか。話を聞くうちに、コミュニティの外にいる大人などからではわからないが、彼女たち同士ではわかり合っている「自分らしさ」があるということがわかってきた。彼女たちは、コミュニティで共有する基準を守った上で、小さな「自分らしさ」を表すことを目指している。それは、美人画の特徴を表すために、各時代の基準顔をベースにしながら、微調整によって絵師ごとの個性を表したことにも似ている。

「リアル世界では、個人は学校や会社などの組織に守られていますが、ネット世界では個人が公にさらされていて危険です。そのような中で、女の子たちがやっているように、コミュニティの外の人からはわからないようにして身を守りながら、コミュニティの中の人にはわかるようにしてリアルなコミュニケーションをしていく方法は、安全で発展的な方法になりそうです」

2つの世界をどう生きるか

バーチャルとリアルの世界とそれぞれにどうやって生きるか。そして、大人からの監視を受け入れながら仲間たちと自由にどう楽しむか。現代を生きる女の子たちの多くが、おそらく誰もが対峙するであろうこうした課題に、極めて柔軟に対処していることに久保は着目したのだ。

「今後、すべての人が、リアルとバーチャルという2種類の世界を生きるようになります。Google元CEOのエリック・シュミットは著書で、“未来はリアルとバーチャルのような多次元的な世界をうまく行き来することのできる人が優位に立つだろう”と言っています。バーチャルな世界でどうやって自分を打ち出して、リアルな世界とつなげていくかという部分を本当にうまくできている女の子たちが多いので、その技術には多くの人たちの未来へのヒントがたくさん隠されていると思います」

「歴史的に見ても、ひらがなや絵文字、自撮りなど、日本の女の子たちから新しいコミュニケーションが生まれて広まったように、シンデレラ・テクノロジーを使って、現在の日本の女の子たちが行っているコミュニケーションも未来に広まる可能性があると考えているのです。私はエンジニアではないので、未来への発想を持った女の子たちとエンジニアとをつなぐため、女の子たちの能力を数値化したい。そして、技術の進歩、文明の進歩に役立ちたい。そう考えているのです」

(監修・寺本 誠 文・中島良平 写真・湯浅 亨)

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