ワイン造りの思想 その1 ワインの質の決定要因《ワイン片手に経営論》第12回

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

■業界の地図を塗り替える思想対立

 なぜなら、フランスにワインが広がって以降、ここ千年ほどかけて、ワインの質は「テロワール」で決まるという考え方が形づくられてきたからです。この蓄積されたテロワール重視の考え方は、実質的に世界最大級のワイン生産国であるフランスが主導し、その結果、世界の常識でもあったわけです。

 ところが、こうした世界の常識に疑問符を投げかけられているのです。「ブドウ品種とテロワールのどちらを重視するか」という論点において、現在のワイン業界は、大きく変化しつつあります。

 本コラムでは、今後、前者を「セパージュ主義」、後者を「テロワール主義」と呼んでみたいと思います。「セパージュ」とは、専門用語でブドウ品種の意味です。

 なお、ここで述べているのはあくまでも思想ですので、たとえばセパージュ主義とは、テロワール軽視または無視ではないということです。あくまでも、セパージュ、テロワール、造り手といったワイン造りの全体像の中で、セパージュに注目し、物事の考え方をセパージュから出発するということです。

 考え方の出発点とは、セパージュの例をそのまま使うと、最初の思考の切り口がセパージュであるという意味であり、その上でテロワールや造り手を考えていくということです。ここで最初の切り口に選ばれなかったテロワールや造り手といった要素に関して、テロワール軽視、造り手軽視とするのは、ややおっちょこちょいで、すべての要素が重要であるということが分かりきった上で、相対的にあえて何を先に考えるかを考えるということです。だからこそ、「思想」「主義」というべき言葉で表されるべき論点なのです。「主義」という言葉で考えると、セパージュに「主」要な意味「=義」づけをするということです。

 ブドウ品種を重視するセパージュ主義に従ったワイン造りをしている国は、ワイン新興国であるアメリカ、チリ、オーストラリア、ニュージーランドといった国に多く存在します。こうした新興国は、伝統に縛られることがありませんから、様々な新しい技術を試行錯誤しながら行っていきます。特に科学的検証をくりかえしながら、質の高いワインを追及しています。

 一方で、土地を重視するテロワール主義に従ったワイン造りをしている国は、先ほども説明したとおり、フランスが代表例です。フランスにおいて長年伝統的なワイン造りをしている人たちは、先祖代々のやり方を大切にします。また、その土地でワインが生まれること自体に意味を与えます。従って、土地という閉鎖的な空間のなかで、経験知を積み重ねた伝統によってワイン造りが行われています。残念ながら、「間違ったことも引き継がれていく」のも事実ですが、こうした面も含めてすべてが伝統です。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事