ワイン造りの思想 その1 ワインの質の決定要因《ワイン片手に経営論》第12回

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 なお、現在、この業界の構図を「新世界 対 旧世界」と表現する場合があります。むしろ、この表現の方が多いかもしれません。ただし、「新世界」「旧世界」という言葉は、だれが造っているかということをより意識した表現であるのに対し、「セパージュ」「テロワール」という言葉は、ワイン造りの要素をより意識した表現であるということです。このコラムでは、「セパージュ」「テロワール」という言葉で、業界の構図を表現し、ワイン業界において何が起きているのか洞察を進めたいと思います。

 今後コラムのポイントは、「セパージュ主義」と「テロワール主義」という二つのワイン造りの思想の切り口で、ワイン技術を巨視的に捉え、ワイン業界の競争のダイナミズムを議論することです。ワイン造りの思想を通して、個別の栽培技術や醸造技術や業界プレーヤーを見ていくと世の中の現象のメカニズムが見えてきます。これは、経営の視点から技術を語る考え方と同じです。個別の要素技術を詳しく知っている必要はあまりありません。一定の思想概念の中で、詳細は技術者に問えばよいのです。

 経営者が行うべきは、自社のモノづくりの思想を理解し、さらに競合の思想や、歴史的な思想の変化を考察することです。自社・競合・顧客・環境を全体のダイナミズムの中で俯瞰し、過去について解釈し、将来について予見することこそが求められているのです。競合他社の思想は、競合の行動現象の示唆からその意味合いを捉えます。なぜ、そのような行動をするのか、次のアクションはなんだろうか。こうしたことは、すべて意識的であろうが、前意識的であろうが、すべて思想から起きることだからです。

 次回以降、回を重ねながら「セパージュ主義」と「テロワール主義」という二つの思想を解説した上で、それぞれの思想が、どのようなダイナミズムをワイン業界に影響を与えたかをお伝えしつつ、経営的な意味合いを議論していきたいと思います。

《プロフィール》
前田琢磨(まえだ・たくま)
慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。横河電機株式会社にてエンジニアリング業務に従事。カーネギーメロン大学産業経営大学院(MBA)修了後、アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社入社。現在、プリンシパルとして経営戦略、技術戦略、知財戦略に関するコンサルティングを実施。翻訳書に『経営と技術 テクノロジーを活かす経営が企業の明暗を分ける』(英治出版)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年8月20日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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