ワイン造りの思想 その1 ワインの質の決定要因《ワイン片手に経営論》第12回
■ワインに表れる三つの思想
「ワインの質を決定する最大の要因は何ですか?」例えば、こんな質問を受けたとします。ワインの質を決定する要因は色々あるのですが、その中でも最大のものは何かと質問されたときに、何と答えるか。ここに、ワインを造る人たちの思想が表れてきます。人によっては「分からない」と答えるかもしれません。しかし、ワイン造りに関わっていれば、意識していようとしていまいと、なんらかの思想に従ってその行為がおこなわれているはずです。
どのような思想があるかというと、ワイン造りの場合、次の三つのどれかではないかと思われます。「ブドウ品種」、「テロワール」、そして「造り手」です。例えば、「ブドウ品種がワインの質を決定する最大の要因である」という造り手は、ブドウ品種の切り口を機軸に、ブドウ栽培・醸造・熟成・販売を行なっていきます。「テロワール」と呼ばれる造り手は、土地の切り口が機軸です。
こうした機軸がワイン造りのあらゆる過程における創意工夫に影響をあたえるのです。これら三つの要因のうち、どれが正解かは実はよく分りません。科学はまだそこまで明らかにしていません。だからこそ、造り手の思想が表れるのです。
三つの要因を、もう少し説明しておきます。
「ブドウ品種」は、生食用であれば「デラウエア」とか「マスカット」といったものですが、ワイン用であれば「シャルドネ」「カベルネ・ソーヴィニョン」といったものです。レストランのワインリストでも、こういった品種が明記されてあるところもあります。こうしたブドウ品種の中で、ワインの原料となる品種数は3000種ほどあると言われており、どの品種を栽培するかは重要な選択肢となります。3000種の中でも、世界で栽培されている高貴種ブドウは、赤が「カベルネ・ソーヴィニョン」「メルロー」「ピノ・ノワール」「シラーズ/シラー」「カベルネ・フラン」、白が「シャルドネ」「ソーヴィニョン・ブラン」「リースリング」の8種類と言われているようです。
地域別に見るとフランスのボルドーでは、黒ブドウ品種としてカベルネ・ソーヴィニョンやメルロー、白ブドウ品種としてソーヴィニョン・ブランやセミヨンが主要品種です。ブルゴーニュ地方では、黒ブドウ品種としてピノ・ノワール、白ブドウ品種としてシャルドネといったものが主要品種となっています。
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