よくわかる!歴史から読む「トランプ旋風」 人気予備校講師が教える「ニュースの教養」
まずは、①の「軍需産業」です。
米国の軍需産業は、第二次大戦のときに急成長しました。冷戦期には、ソ連がいつ攻めてくるかわからないと喧伝し、核ミサイルを量産して莫大な軍事費を政府(国防総省)から引き出したわけです。
米国の軍人たちは、天下り先である軍需産業の意向を無視できません。さらに軍需産業の下には、下請けの中小企業がいっぱいあるので、何百万人もの雇用が生まれます。こういう構造が冷戦期に生まれ、今も変わらずに存在するのが米国の現実なのです。
ベトナム戦争のときは民主党政権でしたが、冷戦末期に大軍拡をやったのは共和党レーガン政権でしたし、湾岸戦争もイラク戦争も、共和党のブッシュ親子が戦争へと舵をとりました。基本的に軍需産業は共和党とくっついている場合が多いのです。
イラク戦争の長期化で、米国国民の厭戦気分が広まったとき、イラク戦争から手を引くことを公約にして登場したのが、民主党のオバマ大統領です。
軍需産業から見れば、イラク戦争のあと大きな戦争もなく、戦闘機やミサイルの在庫がたまっているはずです。このあたりで共和党に政権を取らせて…と考えているでしょう。
アメリカの中間層「草の根保守」って何?
③「草の根保守」も、共和党の強力な支持基盤です。
英語でもグラス・ルーツといって、草の根っこのように米国の大地に根をおろしている保守層(経済的には中間層)のことです。彼らはアメリカ南部や中西部の農村地帯に多く住み、歴史的には19世紀の「西部開拓農民」にまでさかのぼります。
開拓農民は、政府からまったく支援を得ることなく、自分の努力と才覚だけで先住民(インディアン)と戦って、荒野を切り開いてきた人たちです。正当防衛のために個人が銃をもつのは当然の権利と考え、銃規制に反対するのもこの人たちです。
基本的に国家を信用しない。自分の身は自分で守るので福祉もいらない。税金も払いたくないという極端な個人主義、自由主義の思想をもっています。
そもそも国家というものを信用しない草の根保守の立場からすれば、国のために外国で戦って死ぬのは、ナンセンスです。敵が米国へ攻めてくるなら戦うけれど、なぜ海の向こうまで行って戦わなければならないのか……と。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら