よくわかる!歴史から読む「トランプ旋風」 人気予備校講師が教える「ニュースの教養」
草の根保守の「孤立主義」と、福音派的「介入主義」。米国外交はこの間を振り子のように揺れ動いてきたのです。
「トランプ大統領」なら日米、米中関係はどうなる?
今、共和党の支持基盤は分裂しています。国防費で利益を得る軍需産業は基本的に戦争を望みます。逆に「草の根保守」は「国外のごたごたに介入するな」という立場です。
しかし「草の根保守」はただの平和主義ではありません。米国では、一般人が銃を所持することが憲法で認められています。「武装して民兵となるのは米国国民の権利である」と規定されているわけです。「自分の身は自分で守る」「こちらから挑発はしないが、挑発してきた相手は叩きのめす」という立場です。
トランプの立場は、今のところ「草の根保守」の立場です。しかし、オバマ政権8年間の間、急ピッチで南シナ海の軍事化を進めてきた中国がこれ以上、米国を挑発するならば、「トランプ大統領」が取るであろう対応は、オバマとは全く違うものになるでしょう。
中国に莫大な投資をしてきたゴールドマンサックスをはじめとするアメリカの金融資本は、中国に対する融和政策の旗振り役でした。ヒラリーの夫のビル・クリントン政権時代に、チャイナマネーがクリントン家周辺に流れていたことも知られています。一代で個人資産5400億ドルの「不動産王」にのし上がったトランプは、ニューヨークの金融資本に選挙資金を世話してもらう必要もなく、チャイナマネーも通用しないでしょう。
ですから中国にとって、「トランプ大統領」は「凶」となります。それでは日本にとって、「トランプ大統領」は吉か凶か?
日本は従来通りに、在日米軍に安全保障を肩代わりしてもらい、「平和憲法」を死守して防衛費は制限し、商売だけに専念すればよい、という立場から見れば、「凶」となるでしょう。これこそトランプが一貫して批判してきたことですから。
逆に、日本は自国の安全保障にもっと責任を持ち、将来の在日米軍や在韓米軍の縮小に備えて防衛費を増大し、むしろ積極的に東アジアの安全に寄与すべきだ、という立場から見れば、「吉」となります。そういう国となら、「トランプ大統領」は良好な関係を築けるでしょう。
もう一点面白いのは、トランプとプーチンがお互いを高く評価しているという点です。2人とも強力なリーダ−シップを好む愛国者ですからウマが合うのでしょう。これまでプーチンは、指導力不足のオバマのことを見下すような言動を繰り返してきました。
「トランプ政権」の実現で米露関係が劇的によくなれば、日露外交にも突破口が開けます。領土問題解決を急ぐ安倍首相のロシア訪問にオバマは不信感を示していますが、「トランプ大統領」なら、たぶんこう言うでしょう。
「米国は余計な干渉しない。自国の領土は自分で守れ」
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