よくわかる!歴史から読む「トランプ旋風」 人気予備校講師が教える「ニュースの教養」
米国が外国に出て戦争をするのは、実は、福音派の思想が大きく影響しています。
米国はなぜ「世界の警察」をやりたがるのか?
彼らはまず、米国という理想国家(=神の国)を作りました。しかし、まわりを見渡してみると、世界には「間違った信仰」=カトリックやイスラム教、多神教の国がいっぱいあることに気づきます。これらは「正すべき存在」ということになります。
米国人には、米国型の価値観、つまり自由、人権、民主主義を世界中に「布教」すべきだという考え方があります。もし相手の国が米国型の価値観を認めない独裁政権である場合には、武力を使ってもかまわないと考えるのです。
米国が行ってきた戦争は、みなこうした考え方によって正当化されてきたのです。
最初に米国が侵略した国は、メキシコ。メキシコはカトリック教徒のスペイン人が、先住民がいた土地に作った国です。テキサスもカリフォルニアも、もともとメキシコ領だったのです。
最初は、メキシコ領テキサスに米国人が移民として移住します。その米国系移民たちが、「テキサスはメキシコから独立する」と一方的に宣言したのです。この「テキサス共和国」からの申請を受けて、米国政府は、テキサスを併合してしまったのです。
これは最近、ロシアがウクライナからクリミア半島を奪ったやり方と全く同じです。
民主党のウィルソン大統領も、「独裁政権を倒し、民主主義を広める」という名目で中米諸国への干渉を繰り返し、「ドイツの軍国主義を打倒する」という名目で第一次世界大戦に参戦しました。米国が孤立主義を放棄し、ヨーロッパに派兵したのはこれが最初です。
こういう発想を、「宣教師外交」「ウィルソニズム」といいます。
第二次大戦のときは、「ドイツと日本のファシズムを打倒し、民主主義を守れ」という名目でしたし、冷戦期は「共産党独裁に対抗して自由と民主主義を守る」という名目でソ連や中国とにらみ合いました。
そして、冷戦が終わったあとは「イラクの独裁政権」あるいは「テロリスト」から「自由と民主主義を守る」と言ってイラク戦争に勝利した後、ついにはIS(イスラム国)が出現しました。疲れ果てた米国人は、オバマを大統領に選び、孤立主義に回帰して、紛争から身を避けようとしたのです。
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