テスラ「モデルS」の進化が映す自動車の未来 業界の空気を読まない姿勢が現状を打破する

✎ 1〜 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 最新
拡大
縮小

今年1月、テスラは日本市場で「ソフトウエア7.0」のダウンロードサービスを開始することを発表した。カーナビではなく、車本体の機能に影響するソフトウエアのダウンロードサービスの提供は日本初。ソフトウエア7.0によって実現する自動運転の機能も日本で初めて提供されるものだった。

自動運転技術は「高度なレベル2」へ

ソフトウエア7.0の対象車両は「モデルS」。ダウンロードすることで、ウインカーを出せば自動的に車線を変更する「オートレーンチェンジ」、高速道路と自動車専用道路で自動運転が可能な「オートパイロット」、縦列と直角の駐車が可能な「オートパーク」の3つの機能が付与される。オートレーンチェンジはハンドル制御と加減速など複数の操作を同時に行うことから、自動運転の技術としては「高度なレベル2」に相当する。

(編集部註)ここでは米政府の国家道路交通安全局(NHTSA)が定義した内容を記載する。一応この定義が先進国の共通認識だ。
レベル0:車の運転に関してコンピュータが介在しない状態
レベル1:自動ブレーキやクルーズコントロールのように部分的にコンピュータが介在する状態
レベル2:操舵(ハンドル機能)が複合的に加わった状態
レベル3:半自動運転。条件次第ではドライバーは監視義務から開放可
レベル4:完全自動運転

 

ダウンロードで提供されるソフトウエアに対応

さらに、米国の自動技術学会(SAE)では無人車の可能性を指摘し、この状態の完全自動運転をレベル5と定義している。

さっそく私はモデルSを借り受けて、まだ雪が残る軽井沢に向かった。車内でまず目に飛び込んでくるのは17インチのタッチスクリーンだ。このスクリーンでカーナビやカーオーディオ、空調などの操作が行えるほか、エネルギー消費量や航続距離予測もリアルタイムで確認できる。カレンダーやGoogleマップに対応しているあたりは、カーナビというよりスマホに近い。こうしたインターフェースの提案はさすがIT系企業。あまりにスクリーンが大き過ぎて、慣れるまで少々気になるのが難点ではあるが……。

17インチのタッチスクリーン

走行性能は高級スポーツサルーンと呼ぶにふさわしいものだった。特にアクセルレスポンスのよさは想像以上で、どんなレーシングカーよりもいいのではないかと思ったほどだ。モデルSは電気制御のEVなので、ドライバーがペダルを踏めば、その意思にすばやくモーターは反応する。

電気を流せばすぐに最大トルクが得られるEVの特性は内燃エンジンとは大きく異なるところだ。ブレーキも油圧で物理的に制動するのではなく、瞬時にモーターで回生ブレーキも使えるから、アクセルペダルを戻すだけでコンマ2G(減速度)くらいのブレーキ力が得られる。

次ページテストドライブで実感したこと
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT