欧州では国連規則79番(R79)によって、システムによる継続的なハンドル制御の使用は時速10km以下に制限されている。日本では2016年7月1日からこのR79を施行する予定だ。
ちなみに、R79がこのまま運用され続ければ、自動運転の普及の足かせとなることから、WP29(国際基準調和会議)の自動操舵専門家会議(ACSF-IWG)(日独共同議長)において、高速道路における「レベル2」を前提に自動操舵の国際基準を議論している。成立すると2018年初頭くらいには時速10km超の自動操舵規制は解禁されることになる。
一方、国内ではR79が発行される2016年7月1日までは規制する法律が整備されていないので、特別な手続きなしに自動操舵の公道走行が可能となる。テスラのケースはこれに相当するが、7月以降の対応が気になるところだ。国土交通省の関係者に話を聞くと、R79が国内で発行されると、時速10km超の自動操舵が禁止されるが、7月以降も自動走行車の公道走行試験などを可能とするため、国内法での対応を検討しているとのこと。現段階では最終決定されていないが、テスラと同じような機能は7月以降でも認可される可能性が高い。
ダウンロードという手法でも話題に
また、今回のソフトウエア7.0はダウンロードという手法でも話題になった。パソコンやスマートフォン、あるいはカーナビならば、ダウンロードによる機能向上や不具合の修正は珍しくないが、車の本質的な機能に影響するソフトウエアでは前例がない。この新しい試みに対して、自動車メーカーは驚いているが、前向きな意見も聞けた。
日本のリコール制度には「リコール」「自主改善」「サービスキャンペーン」の3種類がある。最も重いリコールだとユーザーも積極的にディーラーへ修理を依頼するが、取扱説明書の誤記や室内温度表示の不具合など、日常の使用に大きく差し障りのないサービスキャンペーンだと、ユーザーの反応は鈍い。
それでもメーカーは製造責任として何度も案内を出さなければならず、コスト負担は想像以上に重いという。ソフトウエアをダウンロードできるようにすれば、メーカーはコストが削減できるし、ユーザーも手軽に利用できるので、双方にとって都合がいいというわけだ。今後、こうしたソフトウエアの提供は増えていく可能性が高い。
テスラがここまでの影響力を発揮するとは、2000年代のEVブームのころに誰が予想していただろう。テスラにしても、アップルやグーグルにしても、IT系の新興メーカーの強みは出る杭になることを恐れないことだ。良くも悪くも業界の空気を読まず、マーケットドリブンでビジネスを推進する。ひとつ間違えば人命を奪いかねない車という製品にとって、マーケットドリブンは必ずしも最適解ではないだろう。しかし、彼らの市場を尊重する姿勢が現状打破につながっていることもまた事実である。
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