「星のや東京」、温泉だけの利用がダメな理由

星野佳路代表に聞く「都市型旅館」の狙い

――高級旅館「星のや」ブランドと、旅館「界」(かい)、リゾナーレでそれぞれ運営スタイルや接客は違うのではないでしょうか。

予約を取るシステム、顧客満足度を把握するシステム、スタッフの発想や行動に移るべきプロセスも、総支配人の役割も全部一緒です。違っているのは、それぞれの施設で顧客のニーズがあって、そこからスタッフが発想する内容は異なってきます。

沖縄の竹富島と、長野の軽井沢では、顧客が旅をしている理由も違えば、目的も違う。各地で最適なサービスを提供するためには、「何を提供すべきか」ということをどこかで誰かが決めるのではなくて、それをタイムリーに(現場が)発想できる仕組みを統一させることが大事です。

星野リゾートでは、スタッフのチームが進化できるような職場環境を整えています。会社の業績がわかる、自分の端末をたたけば、顧客満足度がわかるといったことを通じて、自分で自分たちを診断し、顧客が求めているものを把握し、「じゃあ、何をこだわって提供していこう」ということを決められる。

会議室と休憩室、どちらのカオスが好ましいか?

――それがいわゆる、旅館メソッドということでしょうか。

「星のや東京」の開業は7月20日、サービスや食事内容などの詳細は4月中旬にも発表される予定だ

旅館メソッドで、私はサービスのコモディティ化を防ぎたい。顧客はどこまでも同じ要望を話している、それに応えることだけをやっていると、どのホテルも旅館も、皆同じサービスに行き着いてしまいます。

だから、自分たちの「こだわり」から派生したサービスのあり方を考えていく必要がある。その発想の自由を社員に与えていくこと。これが旅館メソッドのポイントです。たとえば顧客に「タヒチのランギロア島で何をしたいですか?」と聞いても、答えられません。どんな島で、何が産物で、ということはわからない。

現地にいるスタッフが知っている情報であり、現地に住んでいるスタッフが持っているプライドがあるから、「ランギロア島にいらしたお客様には、これだけは食べてもらわないと困ります」とか、「こういう体験だけはしてもらわないと、この島の良さはわかりません」といったサービスが生まれてくる。これは顧客ニーズから来るものではありません。

――星野リゾートの採用サイトには「日本旅館メソッド」、「サービスチーム」、「Gan-Hoな組織」(フラットな組織)がキーワードにあげられています。

サービスチームのマルチタスク化があって、フラットな組織文化じゃないと、旅館メソッド自体がうまく機能しません。人は役割を与えれば発想して、自由度があれば誰でも発言したいと思っている。

10人いれば10の違った意見が出てきて、10人が議論し始めると、だいたい喧嘩になって、カオス状態になる。私は、その中からこそ、正しい意思決定が出てくると思っています。ある総支配人が「サービスはこうでなければならない」と決めれば、上意下達のピラミッド組織では「はい、わかりました」、「やります」となってしまう。でも、結局は納得していないんです。

納得してないから、飲み会や休憩室で愚痴として出てくる。ホテルの従業員食堂や休憩室はだいたい愚痴の嵐なんです。「なんで、こんなサービスやっているんだろう」、「これでは顧客満足してないじゃん」とか。

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