「星のや東京」、温泉だけの利用がダメな理由 星野佳路代表に聞く「都市型旅館」の狙い

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本当の意思決定プロセスをカオス状態にするのか、または意思決定プロセスはスマートに見えて、従業員食堂や休憩室がカオス状態になっているのか、どっちがいいですかという選択肢です。

本当に思っていることは表に出した方がいい。そのうえで、違っていることは、否定したほうがいい。納得いく説明ができないかぎり、総支配人は務まらない。意見は言ってもらって、納得のいく説明をするのというのが大事です。

――これが、星野リゾート流の旅館メソッドなのでしょうか。

「星のや富士」では河口湖畔に開業。アウトドア感覚でさまざまな体験ができる(撮影:尾形文繁)

それにはフラットな組織が重要です。フラットな組織は星野リゾートだけだというつもりはありません。1980年代からケン・ブランチャードという組織論の専門家が、ずっと言い続けています。

『星野リゾートの教科書』で書きましたが、私たちがやっていることに、新しいことはありません。教科書どおりにやっているだけ。

ケン・ブランチャードの『1分間マネジャー』は日本でも翻訳されて、ものすごく売れている。ただ、全部やってみようという変なこだわりを持っている会社は少ない。そういうことなんじゃないかなと思っています。

東京がうまくいかなければ、世界を諦める

――「星のや東京」の成功の指標をどこに置きますか。

星野佳路(ほしの よしはる)/1960年生まれ。米コーネル大学大学院を経て、日本航空開発(旧JALホテルズ、現オークラ ニッコー ホテルマネジメント)に入社。1991年に星野温泉に戻り社長に就任。現在はグループの代表を務める(撮影:尾形文繁)

東京は、世界の高級ホテルブランドが全部出そろっている。パークハイアット、アンダース、コンラッド、リッツカールトン、マンダリンオリエンタル。こういうところに負けないADR(平均客室単価)と稼働率、そこから得られるGOP(売上高営業粗利益)と利益率などの指標です。

「星のや軽井沢」は40%以上のGOPを出しています。「星のや東京」もマルチタスクを導入することで、日本旅館が都市でちゃんと高い収益率をあげられるんだということを示したい。これを投資家に見てもらえれば、必ず日本旅館で世界に行くチャンスが出てきます。

――世界に行くチャンスとは?

世界の大都市にはラグジュアリーホテルが揃っていますが、開発会社や不動産オーナーは、必ず新しいカテゴリーのホテルを求めています。今までそのセグメントの中に、日本旅館という選択肢はありませんでした。

「星のや東京」できっちり成果を出せば、彼らに日本旅館が新しいホテルカテゴリーとして、認識される時期が必ず来ます。東京でそういうことを満喫できるものが出てくれば、世界のほかの都市に出て行けるチャンスがきます。

「今晩はすしを食べよう」「今回は日本車を買おう」と同じように、「日本旅館に泊まろう」というお客様が世界中で出てきてほしいというのが、東京の狙いです。

私たちが世界の高級ホテル強豪と戦っていくには、進化した日本旅館しかない。これがうまくいかなければ「世界に行くのもあきらめる」。それぐらいの覚悟なんですよ。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と2人の娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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