新聞社は「ソニーの失敗」を笑っていられない 「サイロ化」が成功した組織を蝕んでいく

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それから盛田(昭夫)さんとか井深(大)さんが日本橋のデパートの1室で仕事を始めたときには、組織が小さすぎてサイロができるような規模でもなかったわけです。また、盛田さんは、ちょうどアップルの創業者のスティーブ・ジョブスと同じように強烈な個性を持っていたと思います。非常に強い個性を持っている創業者に率いられているがために、全員が頑張って一丸となってやるしかなかった。サイロになる余裕はなかったと思います。

敢えてリスクを受けて立ち、カテゴリーにとらわれず、その垣根を越えようとしたのが、盛田さんが率いていた当時のソニーの特徴でしょう。問題は会社の組織が大きくなっていくときに、どうしても官僚化してしまうということなのです。トップリーダーの役目は、創業時の自由な精神とクリエイティビティをいかに維持していくかということにあると思います。

フェイスブックの例をみると、彼らの歴史はまだ浅いですが、それでも規模が急拡大している。その中で事業が分裂するのを避けるように、あえて社員が大部屋で働くようになっている。会社の中を自由に行き来させて、いろいろな部門でアイディアを交換していく努力をしています。

オフィスは「大部屋」であるべし

ジリアン・テット(Gillian Tett)/フィナンシャル・タイムズ(FT)紙アメリカ版の編集長であり、FT紙有数のコラムニストでもある。1993年にFT紙に入社する前は、文化人類学者だった。旧ソ連のタジキスタンの小さな村に3年暮らし、結婚慣習を観察。文化人類学者として身につけた方法論について、テット氏は「インサイダー&アウトサイダーの目で観察すること」と説明している

――マイクロソフト本社は、かつて個室レイアウトでした。今では、その壁を壊してコラボレーションスペースを広げています。オフィスのレイアウトと官僚主義化には相関関係があると思いますか。

大いにあると思います。環境は私たちの行動と考え方に大きな影響を与えます。私自身、大部屋で仕事をしたこともあるし、キュービクルで仕事をしたこともあるのでわかるのですが、別々の部屋だと、社員同士の対話があまり行われない。偶然に誰かと話してアイデアをもらうことが、非常に少なくなるのです。私自身の経験からも、環境は大事だと思います。もちろん環境を整えればサイロができないというわけではありませんが。

ただ、住んでいる場所の環境、仕事をしている場所の環境は、人間のメンタルマップに大きな影響を与える。そして、その場所に長くいると、自分の持っているメンタルマップを強化し続けるものです。だからとっても重要だと思っています。

フェイスブックの場合には、オープンスクエアということで、外で仕事をすることもできる。サンフランシスコは天気がいいからそれができるんです。しかし、オハイオ州クリーブランドでは、天気が良くないので難しい。そこで、私の本の中に出てくるクリーブランド・クリニックは、あえてビルの間を廊下でつないでいます。初めはその廊下はムダなもののように言われていたようですが、実はその廊下を通るうちに、社員がたまたま会って話をするようになる。そうすると、ちょっとしたいいことが起こるのです。建築的にも、偶然会うような場所を設けることは重要なのです。

――そうするとフロアがいくつもあるような会社の構造は良くないですね。どうしてもフロアごとにバラバラになってしまう。

絶対にダメというわけではないですが、一つの檻の中に閉じ込められているような状態は避けるべきだと思います。

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