新聞社は「ソニーの失敗」を笑っていられない 「サイロ化」が成功した組織を蝕んでいく
――マネジメントのトップがどこにいるのかも重要です。奥まった部屋の中にいるのか、あるいはオープンスペースにいるのか、によって社員のモチベーションに大きな影響を与えるのではないでしょうか。
私も重要だと思います。リーダーの中には人に見られるのが好きでない人もいますが、私は見られるのが好きですね。フィナンシャル・タイムズのニューヨークオフィスでは、プライベートで話をするときには部屋に行きますが、それ以外のときは、普通にみんながいる机に座っています。そうしていれば、みんなが今何を話しているか、何が話題になっているかが聞こえてきます。
リーダーの顔が見えることも重要ですが、リーダーがその場で何が起きているかを把握できるということのほうが重要だと思います。フェイスブックではマーク・ザッカーバーグCEOやシェリル・サンドバーグCOOは一般従業員と一緒になって働いています。彼自身はオフィスも持っていますが、彼自身がフィッシュボール(金魚鉢)と呼んでいます。中に誰がいるのか見えるようになっています。
あなたのオフィスはどうなっていますか。
――大部屋です。
新しいですね。いいことだと思います。
「1人サイロ化」をどう防ぐか?
――ただ環境が大部屋であっても、工夫をしなければ「1人サイロ化」が進んでいく。隣の人が何をやっているのかが分からない、ということは生じがちです。とくにジャーナリストの集団っていうのはサイロ化しがちではないでしょうか。フィナンシャル・タイムズではどのように防いでいますか。
例えばブルームバーグみたいなところは、非常にサイロ化が進んでいる。ジャーナリストたちも、自分の専門領域が重要になっていて、異なる領域では交流がない。確かに、ニュースの組織は、どうしても細分化される傾向にあると思います。
その点、フィナンシャル・タイムズは違っています。私は強いモットーを持っており、それを繰り返しています。1点目として、ものを書くときに必ず国境を越えた視野から考えるということ。それから2点目として、自分の専門分野以外のところも含めて考えるということ。そして3番目として、政治的に右や左に偏らず、自分個人の見方に頼らないようにすること。記事を書くときに、必ずこの3つを考えるように言っています。
私たちジャーナリストの役割は、いろいろなところをつなげることにあると思います。専門の記事も大事ですが、多様な見方を紹介することが重要で、実際にそうした記事を読みたいという読者がたくさんおり、その市場もあります。2月に入ってから私たちが発表したスローガンは、「Make the Right Connection(正しいつながりを作る)」というものです。
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