「営業」だった私がフィルムスクールを選んだ理由《ハリウッド・フィルムスクール研修記2》

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 広告会社に勤めていたころ、クライアントと広告クリエーターの間で板挟みになることは日常茶飯事でした。クライアントの意見を代弁する営業という立場でしたので、クリエーターに対して「お金をもらってるんだから、言うとおりにやってくれよ」と思ったことも正直多々ありました。

同じ社内でも、一般の文系大学出身の私と、美大出のクリエーターとでは、わかり合えないことがあります。そのギャップを埋めたいと思ったことも、監督や脚本家とのコラボレーションの機会がふんだんにあるAFIを選んだ一つの理由でした。

大学時代にクリエーター養成学校のデジタルハリウッド・杉山知之校長の話を聞く機会があり、「プロデューサーを志す人間は、一度は自分で作品をつくってみるべきだ」と語っていたのがずっと記憶に残っていました。

フィルムスクールの2年間とは、ビジネス面・製作面での実務を学ぶだけではなく、特に社会人になってからは失いがちなクリエーティブな環境にどっぷりと身を置く好機だと感じています。

AFI・UCLA・USCのプロデュース学科で学ぶ日本人は合計しても年間に1−2人程度。それも、日本人が学び始めたのはどの学校でもここ数年のトレンドです。中には実際に一流ビジネススクールにも合格したにも関わらず、フィルムスクールを選んだ方もいます。

「企業の求める人材が、左脳型のMBAから右脳型のMFA(芸術学修士)にシフトしつつある」といった説を唱える著名経営コンサルタントもいるそうです。MBAを検討されている方は多くいらっしゃると思いますが、コンテンツビジネスに興味のある方にとってはフィルムスクールも一つの選択肢だと思います。


木野下 有市 (きのした・ゆういち)
 1980 年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒業後、広告会社にて大手飲料・製薬メーカーの広告キャンペーン等を担当。2008 年8 月よりアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI/米国映画協会)大学院にて映画プロデュースを専攻。ギャガ会長・東京国際映画祭チェアマン依田巽氏の寄付で設立されたAFIの奨学金を受け、芸術学修士の取得を目指して勉強中。

《ハリウッド・フィルムスクール研修記》バックナンバー
(1)ハリウッドの就職事情、インターン探しで見えた米国エンタメ業界 - 09/07/08
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