「撤退する」がゴルフ場の生き残る道だった 丸山茂樹のホームコースがメガソーラーに

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いったいどういう判断があったのか。ファイブエイトゴルフクラブ小森寿久社長に話を聞いた。

閉鎖に至ったいきさつを話す小森寿久社長

「2011年3月の東日本大震災までは、栃木県地区ではグレード高いゴルフ場として、首都圏からの来場者も多かった。しかし、震災以降、原発事故の風評被害を含めて売り上げが年間4億円から3億円へと減少。年間入場者数は3万人を維持していたが、震災以降は地元ゴルファーが中心となり、地域ゴルフ場の客単価に合わせて低価格での営業をしていかなければない状況となった」

そのような状況で、サービスの質やコースのクオリティを落とさず、どのようにコスト削減していくかが経営課題となった。解決策の一つが、東日本大震災時の教訓を生かすことだった。

当時、地元の矢板市において停電や断水など生活インフラが滞る状況が数週間続く中、井戸と重油ボイラーを持っていたことを活用して、給水ポイントとゴルフ場浴場を地域住民に開放し、休息の場を提供した。そのときに、非常時の重油調達の難しさを体験し、災害に強い「エネルギーの自給自足」による経費削減策を図ることとした。

経済産業省の「住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業補助金(通称ZEB補助金)」を活用し、風呂、給湯、暖房等の熱源として重油ボイラーからゴルフ場の間伐材を利用してのバイオマスボイラー、省エネとして電気を自給するための300KWの太陽光発電を設置、高効率のエアコンも導入した。このことにより、ゴルフ場で使用するエネルギーの100%を自給できるようになり、年間1200万円の経費削減を実現したという。また敷地内外で農園を営み、有機野菜やイチゴ栽培にも取り組むなどしてゴルフ場経営を継続してきた。

しかし、単独経営のゴルフ場としては、資金繰りを含めて経営状況はなかなか好転しなかった。

スマートコミュニティの核となる存在に

「ソーラー発電の事業会社からメガソーラー発電所へゴルフ場用地の借用の話があり、今後の中長期的なゴルフ場経営を考えた場合、債務返却の見通しも厳しいことから、3月にコースを閉鎖し、33メガワットのソーラー発電へ転用することを決断した」(小森社長)

今後については、会社を存続させて従業員の雇用を確保する。コース自体はメガソーラー発電所として発電事業者に土地を貸す。クラブハウス、その周辺の土地を活用して、地産地消による食糧自給、再生可能エネルギーを利用したスマートコミュニティを目指す。一つのモデルケースとなることで、再生可能エネルギーを使った取り組みをほかのゴルフ場に横展開するコンサルティング事業も進めていく考えだ。

小森社長は、これからのゴルフ場の生き残り策として、「ゴルフ場の資源を活用し、地域社会になくてはならないコミュニティーとなることで社会的価値を高め、資産価値を上げることで投資を呼びこむ。それが生き残る術ではないか」と話す。

ファイブエイトゴルフクラブの発展的解消は、ゴルファーにとっては寂しさを伴うものかもしれない。ファイブエイトはゴルフをする場所ではなくなるかもしれないが、地域に密着した一種のカントリークラブとして生き残ろうとしている。その姿は、今後のゴルフ場経営を占ううえでも注目に値する。

嶋崎 平人 ゴルフライター

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しまさき ひらと / Hirato Shimasaki

1976年ブリヂストン入社。1993年からブリヂストンスポーツでクラブ・ボールの企画開発、広報・宣伝・プロ・トーナメント運営等を担当、退職後、ライターのほか多方面からゴルフ活性化活動を継続。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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