婚活攻防「頭の良い女」vs.「顔の良い女」 東京の「婚活事情」最前線<7>
親友のためを思っての正論を言っているつもりなのだろうが、当の本人はすでに苛立った表情を隠せない。
伏せた目の下には長い睫毛が綺麗な影を作っていて、キメの細かい美しい肌がさらに際立っている。黙ったままでいる真理子は、一見理美に攻撃されているだけのように見えるが、そうでもない。
濃いメイクをし、身体のラインが際立つ服を着ている。どちらも真理子にしか似合わないようなもので、挑発的なのだ。普通、プロのモデルが平凡な外見をした友人と会うだけでここまでは着飾らないと思う。そこに真理子の我の強さを感じてしまう。
友人だから……だけではなさそうなやりとり
思春期を共に過ごしたという親友は、ある程度大人になってからできた友情とはちがい、無駄な遠慮や気づかいを省くというのは理解できる。だが、理美のお節介なアドバイスも真理子の不躾な態度も、長年の友人間の中に生まれるものというだけでは処理できない攻撃性が滲み出ていた。
真理子はうつむきながらも、背筋をピンと伸ばし、細く形の良い脚をこれ見よがしにゆっくりと組み替えた。ミニスカートから伸びるマネキンのような長い脚は、女であっても一瞬目を奪われうっとりとしてしまう。真理子はたぶんそれを知っている。これが、美脚を持たない理美への反撃なのだ。
……。
気まずい沈黙が流れ、理美は「ちょっとトイレ」と席を立った。
「可愛くない子って、男の人のご機嫌とるのに大変ですよね」
「理美っていつもああなんですよ。別に私、男の人には困ってもないし、結婚を焦ってもないんですけどね。取材とかも慣れてないだろうし、私の悪口と自分の仕事の自慢しかネタがないんですよ」
急に真理子は顔を上げた。
「この前も私のために普通のサラリーマンを紹介するって言って、食事会を開いてくれたのはいいんですけど、『真理ちゃんはモデルだけど最近仕事は微妙だからあまり触れないであげてね。私は一流企業で真面目に働いてますけど』みたいなことずーっと言ってるんですよ。わざとらしく経済の話とか、私のわからないような話題ばっかりして」
パッチリと開いた瞳は流行りのカラーコンタクトで灰色に染まり、人形のように見える。
真理子によると、そもそもサラリーマンの男たちに興味など毛頭なかったが、無理矢理に連れていかれた上に始終今日のように馬鹿にされていたという。相手の男たちも女版理美のような堅い男たちで、さらに真理子を見世物のように扱ったらしい。