中野:この0.1%があるから、マネーストックが増えないのですよ。結局、この755億円部分は今回、マイナス金利にはならないわけですよね。これ、銀行の既得権みたいなものですよ。
渋澤:だから、外国人からすれば「な~んだ」ということになり、マーケットも再び逆回転を始めたということでしょう。
それでもインフレにならない理由
藤野:でも、マイナス金利にしたことの具体的な効果が見えて来なければ、近い将来、幅と規模を拡大してくるでしょう。今回は、とりあえずマイナス金利を導入したことに大きな意味があって、将来、さらに広い範囲でマイナス金利にするから、それに備えろということを暗にメッセージとして送っているわけです。
今、株式市場では銀行株が大きく売られていますが、ファンダメンタルズで考えれば、この程度のことで銀行経営が揺らぐことはない。ただ、さらにマイナス金利が深化すると、どこかの段階で大きな影響が及ぶ恐れがある。そこを株価は織り込みに行っているのだと思います。
中野:これだけ量的金融緩和を行い、マイナス金利にまでしたのに、それでもインフレにならないってどういうことなのでしょう。これまで経済の世界で常識として通っていたことが、全く通用しなくなっている。本当に不思議です。マーケットは決して合理的には動かないという認識を、改めて持ちました。
藤野:貯蓄の大部分を握っている高齢者は、マイナス金利であろうとなかろうと、自分の将来に不安を覚えた時点で現金を抱え込むということを、経済学で説明出来なかったということなのでしょうね。今回のマイナス金利は、このように非合理的に動いている人たちに対して、黒田日銀総裁が非合理な政策で対抗したという形にも見えます。
中野:でも、マイナス金利の導入によって、無限に金利を下げられることになったわけですよね。これまで、ゼロ金利政策によって金利の下げ余地が無くなったから、量的金融緩和に踏み込んだわけですが、マイナス金利を導入すれば、理屈のうえではいくらでも利下げできるようになる。それがもたらす効果はまだ分かりませんが、マイナス金利が金融政策の新たな発明であるのは事実でしょう。
それが吉と出るか凶と出るか。ただ、日銀がマイナス金利を導入したことで、欧州は3月に利下げを余儀なくされるでしょう。それをしないと、またマーケットが大荒れになる恐れがあります。
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