要は「必要以上に現金を持つな」ということだ プロ3人がマイナス金利の世界を徹底解説

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渋澤:スイスなんて、2年物でマイナス1%ですからね。日本は確かにマイナス金利にはなりましたが、30年物なら1%は付いている。ドイツだと同じ30年物で0.91%。ちなみにブラジルは1年物で14%を付けています。

中野:日本は2月16日からの準備預金積み期間から、金融機関が保有する日銀当座預金にマイナス金利が適用されます。日銀当座預金というのは、金融機関が他の金融機関や日銀、国と取引を行う場合の決済手段、金融機関が個人や企業に支払う現金通貨の支払い準備、そして金融機関の準備預金という3つの役割のため、日銀内に設けてある預金口座なのですが、この当座預金に適用される金利がマイナス金利になると、銀行としては今までのように、当座預金にお金をどんどん入れることができなくなります。

そうなった時、銀行のビヘイビアとして、どこにお金を持っていくのかといえば、国債を買うしかないので、相対的に利回りを確保できる20年債、30年債を買おうとするでしょう。恐らく、これらの債券は取り合いになるのではないでしょうか。結果、2月16日以降、日本の超長期金利も、ドイツのそれと同じ水準に向かって、急低下していくと思います。

渋澤:長期国債の利回りがマイナスになることの意味を改めて考えてみましょう。今まで長期国債は国の信用力を背景にして元本が保証されていたわけです。償還まで保有すれば、少なくとも元本割れにはならなかった。それがマイナス金利になると、償還まで満期保有すると元本を割り込むことになります。ここに込められた日銀のメッセージをわれわれは理解する必要があるでしょう。要するに、円建ての債券を保有するのは控えましょう、必要以上に現金を持つのは止めましょう、ということです。

いびつな金利体系が出現か

中野:日本はもちろんですが、マイナス金利って有史以来、一度もありませんでしたよね。これまでお金を借りた人間が、利子を支払っていたわけですが、マイナス金利になると、理屈としては、お金を借りた人間が利子を受け取ることになります。ただ、あまりにも従前の金融の常識からかけ離れた状況に直面し、現場は相当に混乱しています。欧州なんて、マイナス金利なのに、住宅ローンの貸出金利はむしろ上昇しています。

渋澤:マイナス金利の場合、銀行の側からすれば、預金として集めたお金から金利を受け取る一方、貸出に対して金利を支払わなければなりません。でも、実際には預金者への影響を懸念して、預金金利はマイナスにしていません。ただ、それでは銀行の収益源である利ザヤを稼げなくなるので、逆に住宅ローン金利を引き上げるなど、いびつな金利体系が現われるかもしれません。

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