ショコラ界の"超一流"、小山進の「頭の中」 世界一になった52歳がここまでやる!
今冬の新作「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2015」は4つのショコラからなるが、ショコラそのものはもちろん、ショコラ一つひとつのストーリーづくりや、パッケージデザイン、イメージ写真のプランニング、イメージ音楽制作のプロデュースまで、一切合切を自ら手掛ける。パティシエ・ショコラティエでありながら、作家であり、アートディレクターであり、音楽プロデューサーでもある。
さらにカカオの道を究めようと、カカオティエ、ひいてはクーベルチュリエを目指し、日々邁進中だ。
今、52歳。その情熱はどこからくるのか。世界が認め、世界を驚かし続けるパティシエ・ショコラティエ、小山進。いったいどんな人物か。その頭の中に迫る。
まるでアート!独創的な「小山流」の世界
――小山さんにお会いして驚きました。パティシエやショコラティエというと、物腰柔らかなイメージが強かったのですが、非常に精力的というかエネルギッシュな印象です。でも、といってはなんですが、作品はとても細やかで繊細な味わいです。かつ、驚きもある…。今冬の新作「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2015」をいただきましたが、これはどうやって生まれたのですか?
テーマは「運命的なつながり」です。産地、素材、人、すべてにおいて、出会うべきものに出会い、完成しました。
カカオって実はフルーツなんです。果肉の糖度が高いことにより、果肉の中心にある種・カカオ豆が発酵し、深い味わいになる。「チョコレートってフルーツなんだ」と、感じてもらいたくて作ったのが、1つ目の「アルアコ72%&カカオフルーツ」。カカオパルプとアルアコ72%を合わせたガナッシュで、カカオの果肉の甘酸っぱいフレッシュ感とそのショコラの持つフルーティーさやフローラルさをマリアージュさせました。
2つ目は「カモミール&ダブルベリー」で、別名「草原の少女」。カモミール草原で遊んでいる、小学校6年生くらいの女の子をイメージして作りました。イチゴとグロゼイユ(赤すぐり)の2種のベリーを使っていて、赤すぐりの酸味が少女を少し大人びた印象にさせます。それがカモミール草原の中でさっと駆け抜けていくようなイメージです。
3つ目は「プラリネ日向夏」。ピエモンテ産のヘーゼルナッツをできるだけやさしくキャラメリゼした自家製のプラリネに、宮崎県産日向夏の皮・実・種のすべてを加工したフレークを閉じこめています。口に入れると、口の中の水分と合わさって、日向夏の持つ酸味、甘味、心地よい苦みがどんどんよみがえってきます。
最後が「エルダーフラワー&カシス」。今年のペルー・チャンチャマイヨ産のカカオがすごくミステリアスな味わいでエルダーフラワー(セイヨウニワトコ)に合うと思い、作ったガナッシュ。今まではカシスの隠し味にエルダーフラワーを使っていましたが、これはエルダーフラワーが主役。ニワトコの木の屋敷に住んでいると呪い殺される、という逸話があるので、イメージ写真も紫でミステリアスなイメージにしました。
作品づくりは日常が大事で、キッチンの中だけで作っているわけではありません。四季に応じて、朝の香りや夕方の色が毎日少しずつ変化するように、僕は、その日常の機微を記録・記憶し、それをショコラに変換して伝えたいんです。
技術さえ高ければパティシエやショコラティエになれるわけじゃない。伝えたい情景や伝えたい思い、ストーリーを抱くことから、モノづくりは始まるんです。アーティストが創作や作曲をするのと同じことだと考えています。
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