ショコラ界の"超一流"、小山進の「頭の中」 世界一になった52歳がここまでやる!
――今、日本のショコラ界は「bean to bar」という考え方に基づいた、カカオにこだわったチョコレートバーがブームになりつつあります。小山さんが手がける予定はあるのですか?
カカオ豆をチョコレートに仕立てる、行為としての「bean to bar」には興味がありません。僕にとっての「bean to bar」は、カカオのことをもっと知り尽くしてから行うこと。僕はまだ、ぜんぜんカカオのことを知らない。カカオの世界で言ったら赤ん坊みたいなものです。僕よりもっともっと知っている人がいますからね。
有名なショコラティエやパティシエではないですよ。まだ皆さんが想像もつかないようなレベルの、カカオのことを植物学的にも知り尽くしているようなカカオの専門家たちが世界にはいるんです。
でも、僕に言わせれば、「bean to bar」について勉強しようと決めた時点で、もう「bean to bar」の道は始まっています。今、豆をカカオマスに変える行為をしないだけです。だって、その難しさを知っているし、それに真剣に取り組んでいる方のご苦労や、果てしないレベルでの「差」があると感じているから。
――小山さんほどの方が、カカオについて「まだまだ」とおっしゃるなんて、意外です。
自分ができないことを言葉にして語ることが、今の自分には必要だと思っています。僕は今52歳ですが、この年で「イケてない自分」を発見できることは、自分が成長する大きなチャンスです。普通、52歳の「親父」だったら、たいていのことは不自由なくできるでしょう。たとえ苦手なことがあったとしても、どうしてもできるようにならなければ、という必要性に迫られるわけじゃない。でも僕はそれを放置できません。知っているフリをしている人が多い、フェイクな今の世の中において、自分はこれが不得意だと大声で言いたい気分なんです。
――自分に厳しく、今の姿を偽ったり、大きく見せたりしないということですね。自分自身にも周りにも現状を厳しく言い聞かせることで、かえって、次の目標が明確になりますね。小山さんの次の夢はなんですか?
「夢」じゃないんですよ。僕が持っているのは「目標」です。小学校や中学校で、よく先生が子どもたちに「夢を持ちなさい」と言いますが、夢を持ったら、そのことに安心してしまって、夢を実現するために、今日やらなくてはいけない「具体的な一歩」をやらない子があまりに多い。今日何をやったのか、ということのほうが夢を持つことよりも重要です。それに大きすぎる夢を持つと、今日やるべきことが逆にわからなくなってしまう。夢を抱くよりも、目の前のやるべき具体的なことを一つひとつクリアしていくことのほうが大事です。そうすれば、次の目標が見えてきます。日々の小さな目標を繰り返し達成してつないでいけば、自然とゴール、つまり夢に到達します。
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