新生GMはいばらの道、オバマは「国有化」を決断したが…

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保護主義が頼み?

チャプター11で債務を大胆に削減し、強烈なリストラを進める。そして2012年までにハイブリッドカーを14車種発売し、大型車中心の商品構成を180度転換してもなお、再生は約束されたものではない。

「造る車はすべて世界レベルを目指す。5車種当たることを見込んで15車種造るようなやり方は終わりだ」。オバマ演説後に会見したヘンダーソンCEOは、過去の内情をつい吐露した。政府がいくらお膳立てしても、長年しみついた企業の発想や習慣を一変させることは難しいだろう。

有力な処方箋があるとすれば、保護主義だ。GMをはじめ米国メーカーに強烈な優遇策を打ち出せば、販売には追い風が吹く。

実際、政府が先月から実施した部品会社向けの債権保証制度で、その予兆がうかがえる。保証を申請したある日系部品メーカー幹部は「米国内で現地調達し生産した部品の売掛債権でないと認可されない。つまり日本から輸出した部品はNG。強烈に選別されている」と明かす。もちろん完成車を保護した際の国際的な批判は部品の比ではない。

大型車「ハマー」の売却で中国の重機メーカーと暫定合意するなど、再建プランは粛々と実行に移され始めた。だが、新生GMの道のりはまだ不透明であり、それはオバマが背負い込んだ巨大なリスクと言い換えられる。

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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