亡国予算 闇に消えた「特別会計」 北沢栄著 ~描き出される「官」が操る魑魅魍魎の世界
まず実態に驚き、次にこんな日本に誰がしたと憤慨し、誰もが「改めろ」と声を上げるだろう。塩川正十郎元財務相が国会答弁で「母屋でおかゆ、離れで子供がすき焼き」と認めた国の特別会計の問題である。
2009年度予算でも一般会計とは別に、4倍の規模の特別会計が存在する。それどころか08年度は一般会計の約59%に当たる約49兆円が特別会計に繰り入れられている。「一般会計は特会事業に資金を渡す『トンネル会計』」なのだ(第1章)。
この特別会計は「官製事業の『資金源』」で、天下りネットワークに使われ、赤字の垂れ流しなのに、情報開示も不徹底、国民のチェックも利かず、ツケだけが回ってくる。表題どおり「亡国予算」である。
官僚機構や財政の究明・分析で定評のある著者が、「『官』が自由自在に操る魑魅魍魎の世界」(第2章)を描き出した。歴史的経緯、官の横暴と政の無力という構造を明らかにした上で、都市再生機構などの独立行政法人や道路財源といった実名を挙げて、金額や手口を詳述する。諸外国の諸制度や改革のシナリオも提示している。
「離れ」の地下に隠されていた「埋蔵金」が掘り出され、いまや政府の新財源にもなっているが、実際は消費税16・8%分に当たる約42兆円もあり、「不用金10兆円強は毎年活用できる」というから、ほぼ無尽蔵ということになる(第4章)。
財政は破綻状態といわれ、消費税増税の議論が盛んだが、裏側にこんな事実が潜んでいれば本当に破綻寸前なのかと疑いたくなる。この本の読者は「離れのすき焼き」に徹底的にメスを入れれば増税は不要と思い始めるのではないか。少なくとも特別会計の抜本改革が進まないうちは消費税増税にゴーサインを送る気にはならないだろう。
きたざわ・さかえ
フリージャーナリスト。1942年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。共同通信ニューヨーク特派員、東北公益文科大学大学院特任教授(公益学)などを経る。参議院委員会で参考人、公述人として意見公述、衆議院委員会で意見陳述、さらに参議院委員会の独立行政法人問題に関する客員調査員など歴任。
実業之日本社 1680円 293ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら