「荒川氾濫、銀座水没」は本当に杞憂なのか 荒川決壊の可能性はじわじわ増加している

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堤防決壊の可能性が指摘される荒川と隅田川の合流点付近。東京都側から撮影
東京都と埼玉県の境を流れる荒川をめぐり近年、氾濫の可能性がささやかれている。「荒川」との名前の由来はよく暴れるから。1910年まで何度も大水害を起こしたが、1911〜30年に下流部分に当たる大放水路が新たに築かれて以降、決壊した例はない。
しかし、地球温暖化に伴う異常気象で、杞憂とは言えない状況になりつつある。昨年9月の鬼怒川決壊と同様、上流で想定外の豪雨が起きる恐れが強まっているためだ。氾濫に関する意識と対策の現状を追った。

 

隅田川との分岐点などで荒川の堤防がついに決壊。地下鉄網を経由して水は東京駅前や銀座にまで達し、日本の経済活動はマヒした—。2012年にYouTubeに公開されたフィクションドキュメンタリー動画「荒川氾濫」では、ショッキングな映像が相次いで出てくる。これはイタズラなどではない。国土交通省の荒川下流河川事務所が公表した啓発用の資料だ。

カウントダウンは始まっている?

動画「荒川氾濫」から、銀座水没のイメージ画像(提供:国交省荒川下流河川事務所/NHK)

動画では上流である埼玉・秩父地方で3日間に計550ミリを超える雨が降れば堤防決壊の恐れがあり、「その日へのカウントダウンは既に始まっているのかもしれない」としている。一方、鬼怒川の水害では台風の影響により、上流地域で24時間で551ミリと、このレベルをはるかに超える雨が降った。

内閣府などによると、荒川氾濫が起きれば地下鉄の最大17路線97駅が浸水すると同時に、3500人が死亡する。被害総額は33兆円、影響人員はのべ1400万人に達する可能性がある。

国交省水管理・国土保全局の元永秀・大規模地震対策推進室長は「近年では異常気象の影響で、狙い撃ちしたかのように局地的・集中化・激甚化して雨が降るようになっている。鬼怒川の水害でもそうだった。想定を上回る災害は必ずやってくる」と、社会全体で備える必要性を強調する。

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