採用プロドットコム株式会社
5月末の段階で大手企業の採用の山は越えたが、中小企業の採用はまさにこれからが本番だ。大手企業中心の就活に邁進してきた学生はここにきて“持ち玉”の企業がなくなり、否が応でも中堅・中小企業に目を向けなければならなくなった。しかし、「一生に一度の新卒切符の使い方」には“就浪”や“就留”といった選択肢もあり、学生の視線は中小企業へはなかなか向かないし、親もまた、つぶれる心配の少ない大手企業を狙えとアドバイスする。
このような状況の中で、中堅・中小企業は学生の意識をどのようにして引き付ければいいのか?そのヒントを二度にわたってお伝えしたいと思う。
●強まる学生の大手志向、安定志向
採用プロドットコムと「楽天/みんなの就職活動日記」が実施した企業の採用活動と学生の就職活動についての共同調査の結果(調査期間:4/24~5/7)によると、文系の内定率は約50%(昨年同時期67%)、理系の内定率は約61%(同78%)と、昨年より大きく減少したことがわかった。また、内定を持つ学生の重複内定の割合は、文系は約20%(同37%)、理系は約25%(同41%)と、こちらも大きく減少した。しかし、一方で内定を獲得した学生のうち、従業員1001人以上の規模の企業の内定を持つ学生の割合は、文系で68%(同73%)、理系で79%(同79%)となり、昨年とほぼ同じくらいの割合となった。大手志向に偏った就職活動のリスクは、この連載でも再三にわたって指摘してきたとおり。「減らすが採る」の採用活動を貫いた大手企業の内定は、5月中旬頃には山を超えるという流れであったのは昨年と同様。学生への内定出しはぐっと絞り込まれた形で、優秀な評価を獲得したコア人材に与えられるという結果になった。
大手が採用を控えた分、「今こそ優秀な人材が採れる」と意気込んでいる中小企業の経営者、採用担当者は少なくない。
しかし肝心の学生が、この不況下で一層大手志向、安定志向が強くなり、中小企業に意識が向いていないのが現状である。
第27回目の連載でもお伝えしたとおり、“就浪”や“就留”について親がキャリアセンターに電話相談をしてくるご時世、なかにはせっかく子どもが優良な中小企業の内定を取っても、どこでもいいから名の知れた大企業を受けることをすすめる親もいるという。大手就職情報会社のリサーチ担当者によると、こういった学生は、これまで不人気だった流通業などの大手企業に流れるケースが多いという。
この話を裏付けるかのように、流通業の2010年度の求人倍率は、前年度の7.15倍から4.66倍に急落している(リクルートワークス研究所調査)。意に沿わない業種であっても、つぶれそうにない企業を選ぶという心理が働くわけだ。
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