視界不良の日本航空、過去最大赤字に転落
日本航空(JAL)の2009年3月期は、旧日本エアシステム(JAS)との統合以降、過去最大となる820億円の経常赤字に陥る見通しだ。世界的な景気悪化で主力の国際旅客と国際貨物が落ち込んだことが響いた。今期は500億円規模のコスト削減を打ち出しているが、今後の景気回復が不透明なことに加え、豚インフルエンザという新たな脅威も迫っており、予断を許さない状況が続いている。
JALによると、豚インフルエンザによるメキシコへの渡航キャンセルは、4月末までに1割に上ったという。WHO(世界保健機関)が警戒水準を引き上げたため、キャンセルが多方面に拡大する懸念もある。国際線の比重が全日本空輸(ANA)の3割に対して5割と高いJALにとって、イベントリスクはそのまま経営を直撃する。
03年の鳥インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)では企業による海外渡航の自粛が相次ぎ、高単価のビジネス客が空から消えた。同年度にJALは巨額の経常赤字719億円を計上。世界では業績不振を理由にした再編淘汰が相次いだ。今回は景気悪化に追い打ちをかける形で、状況は深刻だ。
最大費用である燃料価格の急落も効果は限定的。先物予約で約8割超が確定しており、高値購入分もまだ多く残る。価格上昇局面ではヘッジ効果が大いに効くが、今は逆。下落局面では評価損が増え純資産に計上する繰延ヘッジ損が拡大。株主資本比率は10%水準と危険水域まで半減する。これはいずれ営業費用として顕在化する含み損ともなる。
今期は社債償還520億円や長期借入金1200億円の返済も迫っており、今期後半までに新たな資金を確保する必要がある。金山佳正取締役は「日本政策投資銀行、国際協力銀行、メガバンクなどを含めてきちんと対応してもらう」と資金調達に自信を示す一方、改正産業再生法に基づく公的資金注入については「検討していない」(同)と言明した。
だが、「環境が変わらなければ、2期連続赤字が濃厚」(大手証券アナリスト)という状況下、金融機関から追加のコスト削減を迫られるのは必至。12日の決算発表で、これまで以上に大胆な追加リストラ策を示せるか、注目が集まっている。
(冨岡 耕 =週刊東洋経済)
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