カシオ「最強スマートウォッチ」開発の内幕

強みを活かすためにアウトドアに特化した

カシオは1980年頃から辞書やゲーム、GPS、カメラなど、さまざまな変わり種時計を発売してきた。2000年からは携帯電話事業にも参入するなど、腕時計と電子機器の両面で事業を展開してきた稀有な会社だ。その点からすればスマートウォッチへの参入は自然だった。しかし、4年にわたる開発は苦難の連続だったという。

カシオは40年近く機能性時計の開発に取り組んできた歴史を持つ

開発のきっかけは冒頭のとおり、和雄会長の号令で始まった。当初のキーワードは”つながる”こと。プロジェクトのトップには和雄会長の長男で現社長の和宏氏が就任、時計やデジカメを初めとした様々な部署から集めた20人ほどのメンバーで始まった。

和宏社長はメンバーに「単に”モノ”を売るのではなく、それを用いて行う”コト”を提供しなければならない」と何度も伝えたという。和宏社長の下で開発を主導した南俊二新規事業部長はこう語る。「当時はスマホの普及で無線通信が急速に拡大していた。ユーザーの”一等地”である左手首に端末をつければ、色々なことができると考えた」。

作っては散っていった、試作品の数々

プロジェクト開始から1年。2012年末には第1号モデルが完成。この頃はバンドに四角いディスプレーがついたシンプルな形で、右下にマイクが付いていた。携帯電話で通信してアプリを動かす点は現在と変わりないが、独自OSを搭載していた。

発売したモデルとは異なる「四角」の試作品。左が試作第1弾、右が第2弾だ

だが、この第1号モデルは立ち消えとなった。「何に使うのか?」という指摘に対し、十分な答えを出せていなかったからだ。また、当時は「スマートウォッチ用の部品がなく、スマホの部品を応用していた。今思えば完成度は低いものだった」(南氏)。

失敗にめげず、翌年には試作第2弾が完成する。こちらは防水機能やセンサーを持たせ、スポーツのシーンで使うユーザー向けに売り出す考えだった。しかし、これも挫折に終わる。スポーツ用途には十分すぎるスペックを持つ一方、防水にする過程でマイクを搭載できなくなった。当初の”つながる”というコンセプトから後退するものだったからだ。

2度の失敗によって試作品の製作はついにストップ。企画の練り直しを余儀なくされた。厳しい状態だったが、和宏社長の尽力もあり、チームは何とか存続する。

そんな中、少しずつ追い風が吹き始める。各社がスマートウォッチを発売したことにより、部品メーカーもそれに対応した部品を出すようになってきたのだ。先行する他社の製品が汎用用途中心だったため、カシオはアウトドア用途に特化することを決め、開発を再開する。

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