カシオ「最強スマートウォッチ」開発の内幕 強みを活かすためにアウトドアに特化した

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徹底したのは、アウトドア用途に耐えうる頑丈さと、時間を伝えるという時計としての機能だ。そこに生かされたのが時計事業の技術。「G-SHOCK」で培った耐ショック・耐防水技術により、マイクを搭載した状態でも5気圧防水が可能になった。二層液晶も、もともとはアウトドア用腕時計「PRO TREK」で採用されていた技術を発展させたものだ。

コンセプトとアイデアを固め、2014年夏、開発チームは米国のグーグル本社へ向かった。Android Ware搭載に向けた交渉をするためだ。Androidを搭載し、より多くのアプリを使えるようにすることが必要だと考えた。

グーグルに対し、独自機能の搭載だけは譲るわけにいかなかった

カシオの訪問をグーグルは歓迎したが、二層液晶や防水マイクなどの機能については積極的でなく、実現可能性を心配する声も上がったという。

だが、製品の差別化のためにも、ここだけは譲るわけにはいかない。カシオは粘り強い交渉を繰り返し、最終的にグーグルの賛同を取り付けることができた。

デザイン面でも、「円形にするか、四角にするか」という問題があった。開発チームでも意見は2つに分かれたという。ただ、それまでのアウトドアウォッチは、高度や気圧などを時計の針で視覚的にわかりやすく表示するケースが多かった。こうした表現をスマートウォッチで再現しようとすると、円形が1番ということに落ち着いたという。

膠着市場に風穴を開けられるか

紆余曲折を経て、2015年春に最終試作品が完成。開発チームが和雄会長に見せたところ、特別、製品を褒めることはなかったが、いつまでも手元で触っていたという。「会長は製品を気に入ると、手元から離さないクセがある」(南氏)。ようやくゴーサインが出た瞬間だった。

3月の発売に向けて期待は膨らむ一方、懸念もある。スマートウォッチ市場自体が、さほど活況を見せていないことだ。また、カシオが販売する既存のアウトドア時計と市場を食い合う可能性もある。

南氏は「アウトドア時計とは基本的には別物で、共存は可能。場合によって使い分けるような使い方をして欲しい」と自信を見せるが、実際にユーザーがどのような行動を取るかは未知数だ。

期待されながらも、なかなか普及しないスマートウォッチ。デジタル機器と時計の両面を知り尽くしたカシオが膠着状態に風穴を開け、市場を切り開けるか。4年超の歳月を経て、カシオはスタートラインに立った。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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