異色の介護施設「みちのく荘」、団塊世代の介護を見据えた新たな挑戦
介護の”個”の時代を見据えたサービスに挑戦
中山が取り組む現在の課題は、「2025年問題」。団塊世代が一斉に後期高齢者(75歳以上)となるのが、2025年。介護ニーズが一層高まることを見通して、08年7月にオープンした「みちのく金谷総合デイサービスセンター」は、特に団塊世代を意識している。
介護施設の多くは、集団レクリエーション、集団入浴、決められた食事を決められた時間に食べるなど、集団管理が行われている。団塊世代に限らず、まだ元気なうちに介護施設を見学すると「今さら保育所のようなところには入りたいと思わない。なんだか惨めな気持ちになる」と見学者は口を揃えることが少なくない。
介護にも個の時代がやってくる。中山はそう思い、デイサービスセンターは個々が思い思いにマージャンやカラオケ、映画鑑賞などを楽しめる施設にした。介護職員が辞めるのは、賃金の問題だけではない。流れ作業のような介護をしていては、職員自身も「ただの風呂入れ屋、ただのオムツ交換屋」と化してしまい、ケアがつまらなくなり辞めていく。
ニーズを探り職員自ら考える理想の介護を実現するため、中山は法人の収入安定化を図り事業のポートフォリオを考えた。入所施設は定員が決まっているため、介護報酬が上がらない限り収入増は見込めない。中山は「数をこなせる訪問介護を増やして事業のポートフォリオを組まなければならない」と、5対5だった介護施設と訪問介護の割合を将来的には3対7にする方針だ。
また、同法人では、「必要なところに投資し、無駄は徹底して省く」と、人件費や研修費、福利厚生費を手厚くすることで利用者サービスの質向上を目指す一方で、ゴミ袋や雑巾一枚の無駄も許さないコスト削減を徹底。
金谷デイサービスセンターに導入した「真空調理」は、食材コストだけでなく人的負担の軽減にもつながる。真空調理は夜中に自動的に調理を完了することができるため、メニューの幅が広がれば、職員は朝早く出勤して朝食を作らなくてもよくなる。入所施設にも応用するため現在、レシピを開発中だ。近い将来、施設近郊で農業を始め、とれた農作物を利用して入所施設すべての食事を真空調理で賄う計画だ。